何か忙しい日々が続いておりまして、朝から晩までちょこまかと動き回っております。そんな中、副代表と外で食事をした際の話。
料理を持ってきてくれたウエイターさんがおっしゃるに、「途中でこのスパイスをかけて頂くとまた別の味がお楽しみ頂けますよ。」
グルメからほど遠い人間の私でも、最近こういうのを「味変」と称することぐらいは知っております。知っているんですが、この熟語、何と発音するのか。ネット記事で見かけるだけなので、読みが分かりません。
副代表に聞いてみると「あじへん」だと思うとの由。う〜ん、「訓読み+音読み」ですか。私は「みへん」の方が自然な読み方だと思います。つまり、「音読み+音読み」です。
国語の勉強をしていると、「湯桶読み(ゆとうよみ)」とか「重箱読み(じゅうばこよみ)」というのを習いますよね。
「湯桶読み」とは「訓読み+音読み」のことです。「ゆ」は「訓読み」、「とう」は「音読み」ですからね。
逆に、「重箱読み」とは「音読み+訓読み」のことです。「じゅう」は「音読み」、「はこ(ばこ)」は「訓読み」ですからね。
問題集を使って小学生を指導しているとよく分かるんですが、問題はだいたい4パターンが均等に出てきます。つまり、
パターン1「音読み+音読み」
パターン2「訓読み+訓読み」
パターン3「音読み+訓読み」(重箱読み)
パターン4「訓読み+音読み」(湯桶読み)
のパターンがほぼ同数ずつ出てくる事が多いわけです。
もちろん、「学習の便宜を図る」という目的によるんでしょうが、少し問題があるといつも思っています。というのも、日本語全体を見渡した時、熟語の読みの基本はパターン1「音読み+音読み」が最も多く、パターン2「訓読み+訓読み」がそれに次ぎ、パターン3「音読み+訓読み」(重箱読み)とパターン4「訓読み+音読み」(湯桶読み)はかなり少ないからです。
つまり、「重箱読み」や「湯桶読み」はやや例外的なケースであるのにもかかわらず、熟語の読みの四分の一を占めているかのような誤解を小学生に与えているのではないか。いや、大人にも与えているかも。
やっぱり熟語の読みとして素直なのは、パターン1「音読み+音読み」もしくはパターン2「訓読み+訓読み」なのであって、そこから外れた読みをする新語って、どうも国語的センスに欠けると言うか、漢字・漢語の美学が分かってないな、なんて思ってしまうわけです。
まあ、漢字好きなおっさんの戯言なんですけどね。
で、先の「味変」に話を戻します。
料理よりも熟語の方が大事だとおもう私は、食べるより先に辞書です。手持ちのiPhoneで辞書を検索すると次の通り。
ぐぬぬ、「みへん」敗れたり。「あじへん」と読むのが正しいようです。
「何やねんな、この教養の香りも何もないアホな読みは。『あじが変化する』から『あじへん』って、小学1年生かよ。もうちょっと漢字に敏感になれよな〜。『みへん』とか『あじがえ』とかって読むべきやと思うわ。」ブツブツ。
あ、副代表は私の話をまったく無視して美味しそうに食べてました(笑)。
しかし、「あじへん」って、「ジミヘン」みたいやんな。ジミ・ヘンドリックス。知ってるやろ、あの不世出のギターの天才。ジミの “Purple Haze” って曲あるやん、”Excuse me while I kiss the sky” ってやつ。あれって、日本語にしたら「紫煙(しえん)」やんか、誰も「むらさきえん」みたいに「訓読み+音読み」にしないやん。
他にも「白煙(はくえん)」「黒煙(こくえん)」「喫煙(きつえん)」「防煙(ぼうえん)」「分煙(ぶんえん)」「無煙(むえん)」、パッと思い出すだけでもやっぱり「音読み+音読み」が基本やんか。
他に熟語を考えてみたら、「土煙(つちけむり)」「砂煙(すなけむり)」「血煙(ちけむり)」「雪煙(ゆきけむり)」「潮煙(しおけむり)」って全部「訓読み+訓読み」やろ。
ほんま新語で「重箱読み」や「湯桶読み」にするのってセンスないと思うわ〜。
……って、副代表、ちょっとは聞いてよ!というか、料理ちょっと置いといて!
そんなわけで、聞いてもらえなかったこの話、国語関係なのでブログに書くことにしました(笑)。
ちなみに、音訓の読みを判別する問題、著しく出来が悪いんですよね。国語がよくできる生徒さんでも、この種の問題を苦手としていることが多い。普段から音・訓の読みの差を意識しながら勉強してもらいたいと思っています。
ちなみに「出禁(できん)」とか「美肌(びはだ)」もかなり気持ち悪い……。私だけでしょうか。
※ 調べると、15年前にも同じような記事を書いていました。