世界で一番難しい漢字の覚え方 – 難しい漢字を覚えるコツ

最近こんなラーメンが販売されているらしい。「ビャンビャン麺」という中国陝西省の麺料理です。

私は食事や料理にあまり興味がないので、麺自体はどうでもいいんですが、「ビャン」と読むこの複雑な漢字には興味大有りです。

まず大型の漢字辞典で調べましたが、掲載されていません。Wikipediaで調べてみると、この漢字、「清代の康熙字典に見当たらず、20世紀までに出版された陝西方言の研究書や漢字研究書にもみられないため、かなり新しく作成されたものと考えられる」とされていました。

確かに客観的には覚える必要性に乏しそうですが、漢字好きからすると見ているだけで楽しくなるような字です。総画数57画(「しんにょう」の点を二つで書けば58画)。

自慢するわけではありませんが、漢字を覚えるのは得意です。じっと見た後、念のために2,3回書けば頭に入ります。職業柄、生徒さんの漢字のチェック・採点をよく行いますが、この能力がないと採点作業は著しく時間がかかり、かつ、不正確なものになっていただろうと思います。

個人的には、漢字を覚える際、覚え方を意識しているわけではないんですが、今日はそのあたりをあえて意識化して説明してみようと思います。漢字学習者の助けになれば。

ということで、この記事では、一次的には「ビャン」という漢字の覚え方を説明していますが、そこから「漢字を覚える際の一般的なコツ」を汲み取って頂ければと思います。

なお、以下は私の個人的な考えを開陳しているだけで、他の覚え方を否定する意図は全くありません。自分に合った覚え方を採用されるのが一番です。念のため。

1.漢字の全体像を「イメージ・絵」として頭に入れる

この段階ではあまり難しいことは考えません。単に「イメージ・絵」として頭に入れます。大事なのは、漢字を文字と考えずに単純な「絵」だと捉えることです。もちろん、できるだけ正確な「絵」の方がいいのは言うまでもありませんが、あまり厳密に考えないで構いません。ぼんやりとでもよいので全体イメージを掴むことが大切です。

このイメージ像が後で漢字を書く際の「大枠」になります。つまり、「書いてみて違和感を感じる・感じないの判断基準」になるわけです。

先程も書きましたが、私の仕事柄、生徒さんの漢字採点をする際は、できるだけスピーディーに行う必要があります。解答書なんて見ている暇はありません。時間がかかってしまうと生徒さんの指導が薄くなってしまうからです。

で、どうしているかというと、「頭の中にある漢字イメージ・熟語イメージ・送りがなイメージ等」と「生徒さんの書いた漢字解答」を瞬間的に照合しています。これならばほとんど時間は掛かりません。さっと答案を見て即座に間違いをピックアップできます。あとは誤答部分に正答を書いてあげるだけです。漢検1級レベルになるとそうもいきませんが、大学入試レベル・漢検2級レベルぐらいまでなら、解答書ノールックで採点です。

やや分かりにくいかも知れません。例を出してみましょう。「モナ・リザ」という絵画がありますよね。レオナルド・ダ・ヴィンチの作品です。頭の中で「モナ・リザ」を完全に再現できるかというと、通常そこまでは難しいでしょう。ただ、大まかなイメージは描けるはず。今、漢字の習得について必要だと考える「イメージ」はそのレベルです。

モナ・リザに髭が生えていたら、即座に違和感を感じるはず。モナ・リザの頬にうずまき模様が描かれていても、即座に違和感を感じるはず(バカボンですね)。

即座に落書き部分が見つけられたことと思います。漢字もそれと同じです。イメージ像は書いた漢字に「不要な画が入っている」「必要な画が入っていない」「パーツが間違っている」といった不具合を頭の中で検知するために利用します。つまり、「書いてみて違和感を感じる・感じないの判断基準」になるわけです。

2.漢字のパーツをよく見て、その並び方・他の漢字との類似性を意識する

だいたいのイメージ・絵が頭の中で描けるようになれば、次は漢字を構成するパーツを個別的に見ていきます。この時も「大→小」の方向性を意識します。

まず、この漢字は大きく見て「しんにょう(辶)」+「中身のパーツ」という形をしていることに気づきます。

次に「中身のパーツ」は「窓」という漢字によく似ています。「あなかんむり(穴)」と「こころ(心)」の部分が共通していて、「ム」の部分だけが入れ替わっていると考えるといいですね。

とすれば、あとは一番ややこしい「ム」に入れ替わる部分だけを覚えればよさそうです。

その入れ替え部分も、よく見ると勝手知ったるパーツばかりです。

左端が「」、右端が「りっとう(刂)」。言い換えれば、外枠は「前」の下部パーツになっています。漢字の知識がある人は「刖(ゲツ,刑として足首を切ること)」と覚えてもいいですね。

次に、「月」と「刂」に挟まれた部分を見ていきます。

まず「」の上部パーツ+「」が左右に配置されています。「しちょう」なり「いとちょう」なり、自分の読み方を決めておけば覚えやすいでしょう。ここで疑問がわくかもしれません。「しちょう」または「いとちょう」と覚えてしまうと下記のように書いてしまうのではないか?


ここで先程頭に入れた「イメージ・絵」が役立ちます。「ん?何か違和感があるぞ。そうか、『糸』の下の部分がいらないんだった。」そう思えればしめたものです。

もちろん、漢字の知識がある人は「幺(ヨウ,おさないこと)」+「長」と覚えても構いません。

最後に残ったのは「」+「」。これも「げんば」なり「ことうま」なり、自分の覚えやすい読み方を決めておけばよいでしょう。私は「げんば」と頭に入れました。

文楽や歌舞伎で有名な『菅原伝授手習鑑・寺子屋の段』に出てくる「春藤玄蕃(しゅんどうげんば)」からのイメージです。何か見た目が「辛いラーメン」っぽいんですよね、春藤玄蕃って。マニアックすぎて訳が分からない?すみません(笑)。

これで全てのパーツを見ました。もういちど復習。

「しんにょう(辶)」+「まど(窓)」で「ム」の部分を入れ替える

外枠は「刖」

次の枠は「しちょう」or「いとちょう」=「糸長」
(ただし書いてみると違和感があるので「糸」→「幺」にする)

真ん中の枠は「げんば」=「言馬」

これで完成です。

「刖」より内側は、「幺言幺」の上ラインと「長馬長」の下ラインに分けて覚えるという考えもありえますね。お好きな方でどうぞ。

最後に難しめの漢字を覚える際のコツをまとめておきます。

1.漢字の全体像を「イメージ・絵」として頭に入れる
2.漢字のパーツをよく見て、その並び方・他の漢字との類似性を意識する
3.覚えようと意識しながら1と2を行き来する
→その際、できるだけ実際に手を動かして書く。記憶の定着度がさらに高まる。

最後に書家が実際にこの漢字をお書きになっている映像を置いておきます。惚れ惚れするほど上手い!こんな風に字の書ける人を尊敬します。