「弱・強」という言葉の使い方

塾仕事の方が少し落ち着いてきたと思いきや、私的な用事が次々と発生し、なかなかブログに向かう時間が取れません。すみません。

さてさて、米国で古くからやっているシカゴというバンドがあります。割と曲の振れ幅の大きなバンドというイメージがありますが、初期の頃はブラス(金管楽器)隊が印象的で、「ブラスロック」なんて呼ばれていました。次に挙げるのは、その頃の名曲 “25 or 6 to 4” 。緊迫感溢れる演奏がいい。

Chicago – 25 or 6 to 4 (Official Audio) – YouTube

で、ここからがブログの本題なんですが、曲名の “25 or 6 to 4” ってフレーズ、意味をすぐに取れますでしょうか?

歌詞を知らずにスパッと意味がとれた人は、スゴイですね。高校生の頃だったでしょうか、私が初めて聴いた時は意味が分かりませんでした(というか意味を考えずに聴いていた)。

でも、ご安心を。知的階級に属するようなネイティブの人でも、歌詞をよく読んで初めてタイトルの意味が分かったという話をしていたので、日本人がわからなくても当然です。

直訳すると、「25 または 6 、4へ」。意味が分かりませんよね。

しかし、「4」が「4 o’clock」の意だと分かれば、もう大丈夫なんじゃないでしょうか。

そう、 “25 or 6 minutes to 4 o’clock” ということで、「4時25、6分前」って意味なんですよね。別の言い方をすれば、「3時34分または35分」。聞いてみれば、なんと言う事のない話なんですけれども、糸口が見つからないとなかなか解釈に苦しむ表現だと思います。


大昔、オーストラリア旅行をした際、長距離バスに何度も乗りました(グレイハウンドとかそんな類いのバス)。彼の地は大きな大陸ですので、乗車時間20時間なんてのがザラ。

大抵の運転手は休憩に入る際、出発時刻をはっきりとアナウンスしてくれるんですが、時々適当なアナウンスをする運転手がいます。「次の出発時刻はもごもごもご」って、俺オーストラリア人ちゃうねんから、ちゃんと発音してくれよ。

で、あるバスに乗った際、運転手にもごもごと「テン トゥー テン」とアナウンスされたことがあります。「10-2-10??」となった私は、降車時に運転手に「ごめん、発車時刻をもう一度聞きたいねんけど」と尋ねました。再び「テン トゥー テン」と運転手。私が???な顔をしているのに気付いて、「あ、ごめん。9:50ってことね。」と説明してくれました。なるほど! “10 minutes to 10 o’clock” (10時10分前)ってことか!

分かりにくいわっ!(笑)


なぜこんな話を急にし出したかと申しますと、最近、「弱」とか「強」という言葉の使い方を勘違いしている人が増えたという話を聞いたからなんですよね。

「1時間弱」とか「1000円強」という時の「弱」・「強」です。

こんなブログを読んで下さる方は、おそらく「1時間弱」と聞けば「55分程度」、「1000円強」と聞けば「1100円程度」と正しく解釈されると思うんですが、最近はそういう人が減ってきたらしいんですよね。特に若い人たち。

つまり、「1時間弱」と聞くと、「1時間よりすこし少ない時間」とは解釈せずに、「1時間プラスすこし少なめの時間」と解釈する人が多いらしい。こっちは「55分程度」と考えて話していても、相手側では「65分程度」と考えていることが十分にあり得るわけです。

時間やお金というものは非常に貴重ですので、そのあたりの解釈がずれてしまうと、人間関係に問題が出てくる可能性すらあります。なんかもう怖くて「弱」とか「強」とかいう表現は使えなくなってきたなと感じてしまいます。

私が想像する今後の流れ。

「弱」を「ある数よりすこし少ない」と解釈する人と、「ある数よりすこし多い」と解釈する人の2つのグループに分かれてくる

混乱が生じて、使いにくい表現になってくる

死語になる

「ある数よりすこし多い」と解釈する人が多数派になり、そちらが「正しい意味」として定着すれば、それはそれで良いんですが、その中途にあるはずの混乱期を越える事はなかなか難しい気がしています。

ということで、個人的には(とくに授業では)「弱」・「強」はもうあまり使わない表現になっています。