いよいよ3月。まだまだ寒い日が続いていますけれども、そこかしこに春の気配が感じられます。
ついさっき見かけたあるポスト。東京都中野区が、生活保護制度の活用を促進する目的でXに投稿したポストです(画像も中野区Xから引用しています)。
【中野区】生活にお困りの方は生活相談窓口へ
家庭のご事情や生活の状況をお聞きし、生活保護制度などの支援を紹介します。ためらわずにご相談ください。
▼日時 平日8時30分~17時
▼相談方法 窓口(区役所4階)または電話(03-3228-8927)
▼詳細等は区HPをご確認くださいhttps://t.co/lpSxM8omd2 pic.twitter.com/YM2KTm5rR3— 東京都中野区(広報係) (@tokyo_nakano) March 3, 2025
生活保護制度って、もっと日本国民みんなが知り、必要に応じてしっかり活用すべき制度だと常々思っています。
自分に与えられた持ち場で一生懸命働く。それは大人であれば当たり前の権利であり義務ですが、どうしてもそれがかなわない場合だってありえるでしょう。たとえば、身体の障害故に、老衰故に、心の病故に。もちろん、自分に財産があれば、まずそれを使って自己の生活費用を支弁すべきですが、それだって皆が持っているとは限りません。
勤労することが叶わず、持てる財産もない。そんな時、我が国には生活保護制度があります。本当に困窮した時は、国に救助を求めていいんですよ、ちゃんと行政が最低限度の生活を保障します。野垂れ死になんてする必要もないし、我が国は国民を野垂れ死になんてさせませんよ。生活保護は簡単にいえばそういう制度です。
ちょっと難しいですが、生活保護法を引用します。
(この法律の目的)
第一条 この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。(無差別平等)
第二条 すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護(以下「保護」という。)を、無差別平等に受けることができる。
要するに、生活に困窮するすべての国民は、国による保護(特に金銭的援助)を無差別平等に受けることができるわけです。
私は、この制度をとても「美しい制度」だと思っています。法的・社会的な表現ではなく、ちょっとセンチメンタルで詩的な表現ですけれど。
太古の人間にも、身体に障害を負った者や老齢者を見捨てず、コミュニティの中で共に暮らしていた形跡があると聞いたことがあります。もしそれが本当なら、人間の美質を見事に表していますよね。人間って捨てたもんじゃない。
生活保護という制度は、法的に言えば日本国憲法25条(生存権規定です)の具現化ですが、文学的に言えば人間本来の美質を制度として整備したものだと言えるのではないか。
そういう意味で、生活保護という制度が存在していて、きちんと運用されているのを見ると、私は誇らしい気がします。それでこそ文明国家・現代国家。日本も捨てたもんじゃない。そういう意味で、先に引用した中野区のXのポストは(当たり前のことを述べているに過ぎないんですが)、「いいね」を押したくなるポストです。
問題は、自治体レベルでは生活保護に対する上記のような姿勢が見られるにもかかわらず、国家レベルになると妙に冷淡に見えるところなんですよね。
もちろん、生活保護制度を悪用する輩がいるのは、皆さんもご存知の通り。反社会的なヤツが真面目に働こうともせず、高級外車で役所にやってきて生活保護を受給していたり、生活保護を受給している人達から金をむしり取ったりというケースです。
しかし、それは「制度の悪用」が問題なのであって、「制度」やその理念の美しさを否定するものではないはず。そういう悪辣な輩を処刑すれば、じゃなかった、厳重に取り締まれば済む話で、生活保護制度を否定的に見る必要はどこにもありません。
国は制度の活用をもっと国民に周知徹底してもいいと思うんですよね。
私がそれを痛切に感じたのは、数年前の「老後2000万円問題」の時です。ありましたよね、平均的な高齢夫婦の場合、年金だけだと老後に約2000万円の金融資産が不足する可能性があるという報告を、金融庁関連の審議会が発表したという話が。
多数の金融関連会社がマスコミのスポンサーになっているせいか、この話題はマスコミでも結構大きく取り上げられ(「老後資金が足りなくなるんだから、お前らもっと投資しろ」とでも言うことでしょうか(笑))、真面目に生きている人々を震撼させました。
で、私なんかは思うんですが、政府も酷いんですよね。確かに政府・金融庁の言うように、年金だけじゃ足りなくなるから(これも無責任な話ですがそれはさておき)、もう少し老後資金を用意しておいた方がよいのかもしれません。
でもそれに加えて、「ただ、わが国には生活保護制度があるから、無理だったらそれに頼ったらいいんですよ、何にも心配することはありませんよ、日本国民には野垂れ死になんて絶対にさせません」というメッセージを、政府は出すべきなんですよね。そこに一ミリも触れないのは、やはり冷たすぎると思います。
国民も「老後2000万円問題」を真に受けすぎたきらいがあると思います。日本には生活保護制度があるのに、何をキャーキャーと騒いでるんやろ、ちょっとあほ過ぎちゃいますか?というコメンテーターは(私の知る限り)ほとんどいなかったような。
私は、生活保護制度は日本国民の誇りと言ってもよいと思っています。私ももし困窮することがあれば、堂々と受給請求しに行くつもりなのは言うまでもありません。
先述の中野区とは違って、受給を阻止しようと訳の分からない「水際作戦」なんかが行われる自治体があると仄聞しますが、そんなのを易々と論破できるぐらい、国民の方も勉強しておかないとなりませんね。