つきへん・にくづき・ふなづき

漢字の話です。

漢字は構成要素を理解した方が、意味の理解や記憶につながるので、授業の中でもできる限り触れているんですが、生徒からよく疑問が上がるのが「にくづき」
(ちなみに受験国語塾の方は、読解や答案表現が主となり、原則として漢字は取り扱いません。)

私「『月』は『にくづき』と言って、人間の体に関係がある漢字に使われるんだよ。ほら、『肺』とか『腹』とか『肩』とかね。」

生徒「なんで『肉』なのに『月』なの?」

私「それはね……。」(と次のように黒板で説明。)

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生徒「なるほど~。」

授業で説明するのはたいていここまでなんですが、ブログではもう少し突っ込んでおきましょう。

実は「月」と表記される漢字の構成要素は、元をたどると三つの先祖にたどり着きます。

次の図をご覧下さい(字が下手なのがばれてしまう……)。

2009102902.jpg

1は「にくづき」と呼ばれ「肉」が元になっています。

2は「ふなづき」と呼ばれ「舟」が元になっています。

3は「つきへん」と呼ばれ「三日月の形」が元になっています。

微妙に形が違うのにお気づきでしょうか(コンピュータ上のフォントでは違いが上手く表現できないので、下手くそな手書きで説明しています)。

「にくづき」は二本線がぴったり両側にくっつく、「ふなづき」は点々を書く、「つきへん」は右側が開いている、というのが正確な書き方なんですね。

昔は使い分けられていたんですが、現在の常用漢字や人名漢字ではすべて「にくづき」の形、つまり、二本線がぴったり両側にくっつく形で統一されています。旧字体の活字などを見ていると、「前」「藤」などは「ふなづき」(点々で表されている)、「有」「明」などは「つきへん」(右側が開いている)、というように、キチンと使い分けられています。

どうして、こんなことをいきなり説明しだしたのかって?

先日、とある店舗(店舗名に「月」という漢字が入っている)の前を通った際、看板にふと目をやると、ちゃんとロゴが正確な「月」で表記されていたんですね。上図3の形です。ムムッ!この店(というか看板をデザインした担当者)やるな!と思ったわけです。

ここまでお読みいただいた方は、下記お好み焼き店のロゴの違いがお分かりになるかと存じます。

お好み焼・焼そば「風月」

鶴橋風月

片方は間違い、片方は漢字の教養あり、ということになります。もちろん、看板やロゴが美味しさに関係するわけではありません。念のため。