たまには日本語豆知識をば。ずっと書くのを忘れていました(笑)。
「くだもの」という言葉がありますよね。どこから来ているかご存知でしょうか。
私が一番説得力のあると思う説をご紹介します。
く+だ+もの = 木+の+物
詳説すると、
「木」が転じて「く」。母音交替が生じた。
「だ」はやや難しいですが、古代の助詞「つ」が転じたか、または、連体助詞「な」が転じたか。いずれにせよ、現在の格助詞「の」に該当する助詞です。
「もの」は現代語に同じ。
木になる物=くだものというわけです。どうでしょう?説得力があると思いませんか?
この説の良いところは、「けだもの」も同様に説明できるところです。
け+だ+もの = 毛+の+物
獣(けだもの)って、毛に覆われてモフモフしてますよね。だから、「毛+の+物」というわけです。
このあたりまでは、各種の古語辞典や日本国語大辞典で追跡できるんですが、私が気になるのは、「だもの」の前に入るのが「カ行」の音であるというところです。
この方式で出来ている語、つまり、一音節の名詞+古い格助詞と思われる「だ」+「もの」という構成の単語は、私の調べる限りでは、上記2語だけのようです。
ちょっとマニアックですが、ひょっとしたら、古代の日本人には、「だ」という古い助詞(またはその亜型)は「カ行」の音節としか接続しない、などという言語感覚があったのかもしれません。このあたりは少し妄想が入っていますが……。
関連して書いておくと、奈良時代でさえかなり古臭いと考えられていたらしい「つ」という助詞は、現代語の「の」に該当しますが、用法がかなり固定的だったとされています。あらゆる語を結合させる現代語の「の」とは訳が違うわけです。だとすれば、上記の「だ」に関する考えは、意外に的を射ているのかも、なんて思うのは自惚れすぎでしょうか。
ついでに書いておきますと、「まつげ」という単語は、「くだもの」によく似た構成で出来上がったとされています。
ま+つ+げ = 目+の+毛
「目」が転じて「ま」。母音交替が生じています。今でも「まなざし」とか「まなこ」とか「まのあたり」とか「まぶか」なんて形で生きていますよね。
古い助詞「つ」は、現代語の格助詞「の」に該当します。
「げ」は現代語に同じ。「毛」です。
要するに、「目の毛」という意味の古い表現が今も生き残っているわけです。
きゃりーぱみゅぱみゅのヒット曲に「つけまつける」という曲がありますが(付け睫毛をつける女の子の心情を描く曲 — 私も名曲だと思います)、この「つけま」の「ま」は古代から生き残っている語だと考えると、感慨深いものがあります。
って、どこまでも話が広がりそうなので、今日はここまで。