バタバタと忙しい日々が続いている当塾ですが、世の中は野球で盛り上がっているようですね。World Baseball Classic での侍ジャパン快進撃の報が世間を賑わしています。
私は野球自体にはほとんど興味がないんですが、野球にまつわる人間模様を読んだり聞いたりするのは大好きです。爽やかな話も良ければ、憎しみに満ちた恩讐劇もまた面白い。野球に限りませんけれど、人間が限界に挑戦する場では、否応無くそうした物語が生まれるものだと思っています。
さて、昨年2022年、佐々木朗希投手が見事な完全試合を達成し(日本プロ野球史上最年少の完全試合達成)、マスコミが彼の活躍を華々しく報道したことがありました。私もロッテに佐々木という凄い若手投手がいるという話は知っていましたが、野球に疎い私、彼のプレー姿や容姿を見るのは、その日が初めてでした。
したがって、佐々木朗希投手の顔を見るのもその日が初めてだったんですが、私が感じたのは「他の野球選手と全く違う顔をしている」ということです。何と言うのでしょうか、その面構えが最高峰のレベルで戦っているバイクレーサーのようだと直感的に思ったんですよね。
話は少し逸れますが、私はMotoGP(世界最高峰のバイクレースです)のファン。シーズン中は勿論、オフシーズンもニュースを追いかけているわけですが、興味の中心はスピードだけを追求する究極のマシンやレーサーの動向。
そんなわけで、以前「MotoGPに注目!レーサーは超イケメン揃い!」といった女性向け記事を見て、びっくりしたことがあるんですよね。毎日のように見ている顔であることに加えて同性ということもあって、レーサーの顔のことを全く気にしていなかったというか、考えたことすらありませんでした(気になる方は下記の記事を閲覧されたし)。
MotoGPライダーは超イケメンだらけ! 女子ウケナンバー1は誰だ?【イケメンGP開催!】 | clicccar.com
MotoGPシーズン前に要チェック!イケメンライダー12人 | じんせいいわだらけ
よく考えてみると、確かにいわゆる「イケメン」じゃないGPレーサーってほとんど思い浮かびません。これだけレーサーがいれば、「顔はちょっとね……」みたいなレーサーがいてもおかしくはないはず。不思議。何故なのか。
あくまで個人的な意見ですが、世界レベルのレーサー達は普段から「生死の狭間を縫うようにして生きている」ということがその理由なんじゃないでしょうか。
生身でマシンに跨がり時速360kmのバトルを繰り広げ、0.001秒を競う中で些細なミスを犯せば即落命に繋がる世界(実際に落命したり再起不能になったレーサーは幾人もいる)。そんな世界の男達が、ふにゃふにゃとにやけた顔つきになるはずもない。「命の重みを常に感じてきた男達」は、自ずと引き締まった戦闘的な顔になるものなのではないか。そう考えてみると、一流レーサーが「イケメン」になるのは当然なのかもしれません。
話を戻します。佐々木朗希投手のプレー時の顔を見て、私がまず直感的に思ったのは、世界レベルの超一流レーサーの顔に通じるところがあるということです。顔の表面的な造りのことを言っているわけではありません。若手の野球選手を見ていてついぞ見かけたことのない面構えだなと。若いのに珍しい。
気になってネットで調べたところ、すぐにその理由は分かりました。以下、Wikipediaから引用。
4年生への進級直前となる2011年3月に東日本大震災が発生。その津波で父(当時37歳)と祖父母を亡くし、実家も流されたため、母の親戚がいる大船渡市(猪川町または赤崎町)に転居した。大船渡市立猪川小学校に転校し、地元の軟式少年野球団「猪川野球クラブ」に入部。同クラブは猪川小の校庭を練習場所にしていたが、2016年11月までは仮設住宅が建っており、野球をするための十分なスペースが確保できなかったため、保護者や指導者、支援者の協力を得て、近隣の運動施設への送迎、練習試合への招待などを受けていた。
そうだったのか……。父や祖父母を一気に失うなどということが、10歳そこそこの少年にあって良いはずはありません。どう頑張っても受け止めることはできなかったでしょう。肉親を喪失した苦しみ、不安な経済状況、慣れぬ町での新しい生活。大人でも受け止めきれない苦しみが少年時の彼に襲いかかる。そんな中で周囲の人達(おそらく彼ら自身も大変な状況に置かれていただろうと思います)が野球の環境を整えてくれる。
つまり、佐々木朗希投手は「命の重みを常に感じてきた男」なのだろうと思います。そしてその重みが彼の面構えを生んだ。そこには何の不思議もありません。
彼が涙ながらに震災による苦労話をしたというのを聞いたことがありません。おそらく、彼と同じような環境に置かれた人達は幾人もいて、自分だけがそんなことを話すのはおこがましいと考えているのではないかと思います。被災した人や亡くなった家族のためにできることは、黙ってプレーで返してゆくこと。彼の面構えはそう物語っているように思います。
そういう意味で、World Baseball Classic 3月11日の試合に佐々木朗希選手を先発ピッチャーとして登板させたのは、本当に人情を解した起用だったと思います。無言ではあっても、被災された方々の心に訴える大きなエールになったのではないでしょうか。
佐々木朗希投手の今後の益々の成長が楽しみです。