前回の続きです。
翌日。午前4時に出発する予定だったんですが、さすがに疲れていたのか少し寝坊して午前5時に出発となりました。ホテルのフロントの方に礼を述べて、出発です。
往路と異なり、復路は適当にしかルートを決めていませんでした。だいたいの計画は、古めの街道筋を南下した後、国道113号線を西進し、新潟県の荒川胎内まで出て、そこから北陸自動車道で一気に大阪を目指す、といったところ。
朝早くの山形県内は爽快そのものです。昨日の天気は何だったのか。サクランボ畑を眺めながら、しばらく気分良く走っていたんですが、あらら、道を間違えました。iPhoneを取り出してチェックして正しい道へ。で、しばらく走っているとまた間違う。あらら。この調子だと、山形県脱出にかなりの時間を食いそうです。
(朝5時。誰もいない。沿道はたぶんサクランボ畑)
不案内な場所ですし、やっぱり山形自動車道で移動しようかと考え直し、寒河江インターチェンジに戻りました。高速道路なら間違う心配も無し、寒河江から東進し、東北中央自動車道に乗り換えて、山形上山インターチェンジに行こうという寸法です。
そんなわけで寒河江ICから高速に乗ったわけですが、何となくおかしい。昨日、こんなところ走ったっけ?前日の走行は、真っ暗かつ暴風の中だったので、全く自信が持てません。というか、「月山」と「寒河江」の位置関係がよくわかりません。「月山」って宮城県寄りだったっけ、それとも日本海寄りだったっけ?案内板には「月山30km」とあったんですが、地図も確かめずに乗ってしまったよ……。
走っているうちに、「鶴岡」や「酒田」という地名が案内板に現れ始め、アホな私もさすがに気付きました。全く逆方向、西に進んでいる(笑)。まぁええわ、どちらにせよ、日本海側に出て南下すればすれば同じ事だしこのまま進もう、と心に決め、月山(がっさん)と鶴岡を目指します。
瓢箪から駒、この道がすごく印象深いものでした。五月にもかかわらず路傍に雪が大量に残っている月山(がっさん)の峠道は、関西とはかなりムードが異なり、爽快極まりありません。来て良かったと感激しながら、鶴岡市内に。
(一人で走っていると写真を撮る機会がほとんどありません。写真を撮るより景色に感動する方が重要。5月なのに気温9度というのはやっぱり山形)
鶴岡から新潟県までは、羽州浜街道という海沿いの道をたどりました。関西で言えば、紀伊半島の潮岬のようなムードの道で、これがまた印象深いところでした。荒れる日本海を右手に見、潮風を感じつつバイクでひた走る、もう最高です!また息子にもこの景色は見せてやりたいなと思いながら、北陸自動車道へ。
北陸自動車道に入ってからは単純な道です。新潟県(ここを通り抜けるのに結構時間がかかる)、富山県と進み、ここでお昼ご飯。小矢部サービスエリアです。ろくなものを食べていなかったので、最後ぐらいはと海鮮丼を食べましたが、なかなか美味でした。
私、言葉に異常に興味があるタイプなので、止まる先々でいつも人々の言葉遣い・イントネーションに耳を傾けているんですが、富山あたりになると、標準語に少し関西風味が混じるように思います。
今回の収穫は、レストランの案内係の女性の言葉です。この女性、きれいな標準語で客を案内してくれていたんですが、一箇所だけやや聞き慣れない表現を挟みます。「食券をまだお買い求めでない方が『おいでましたら』先に食券をお買い求めください。」
食事中何度も聞いたので間違いないと思います。普通であれば、「おいででございましたら」「おいでになりましたら」「いらっしゃいましたら」という尊敬表現+丁寧表現になるはずです。
この「おいでます」という表現、文法的には色々な考えがありそうです。
「おいで(御出で)」を古い下二段型動詞の連用形と考え、それに丁寧の助動詞「ます」が接続したと捉えることも考えられますが、「おいで(御出で)」を名詞と見て、「ます(在す・坐す)」という尊敬の本動詞が接続されているとも考えられます。「おいで(御出で)」を古い下二段型動詞の連用形、「ます(在す・坐す)」を尊敬の補助動詞と考えるのもよさそう。
いずれにせよ、口語文法より文語文法の方が説明しやすそうな表現です。特に「ます(在す・坐す)」というのは、かなり古い尊敬動詞で、万葉集にもよく出てくる表現。富山弁なのかよく分かりませんが、奈良時代から生き残っている言葉に出会った気がして、嬉しくなってしまいました。
さて、石川県に入ると、少し「帰ってきた感」が出てきます。福井県あたりまで来ると、その感はさらに強まります。滋賀県、京都府と来ると完全にホーム感。先日の恐怖体験も忘れ、走りながら「次はどこに行こうかな〜」と考え出す私は、病膏肓に入っているのかも(笑)。
無事家に到着して、晩ご飯。往復1850kmの旅も終了です。次は息子を連れて、自動車で東北に出かけてみるのもいいかなと思っています。
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