一人旅 奥の細道 #2

前回の続きです。

(前もってお断わりしておきますが、写真はほとんどありません。一人バイクで走っているだけの旅は、写真をとる機会がありませんので……。)

さて、名港トリトンを駆け抜けた後、豊田あたりでちょっと渋滞に巻き込まれたものの、新東名高速の入口、三ヶ日ジャンクションまでかなり快調に進んできました。

ご存知の方も多いとは思いますが、新東名高速は本当に走りやすいですよね。出来たばかりで、路面もサービスエリアもピッカピカ。走りやすいことこの上ありません。開通前には、制限速度を時速140kmにするという話もあったぐらいの高規格道路。結局、制限速度は普通の高速道路と一緒になってしまいましたが……。もし時速140kmの走行が合法なら、さらに素晴らしい道路だったのに。ま、そこは黙って合法かつ安全な運転で東進します。

天気も良し、車の流れも良し、バイクの調子も良し、体調も良し、フンフンと鼻歌交じりで静岡県をずんずん東に。で、清水PAあたりでしょうか、何気なく前を見ると富士山がズズズ〜ンと威容を現しました。本当に見事な富士山の姿、これぞ日の本随一の山。

今まで新東名高速は三ヶ日〜御殿場を4往復ほどしているはずなんですが、いつも曇り空で富士山が拝めなかったんですよね。息子と車で通過した際も、「富士山ってこのあたりじゃないの?」と聞かれて「う〜ん、多分あの雲の向こう側やろうなぁ」と頼りない返事しか出来なかったんですが、今日はまさに日本晴れ。ニッポン男児の爽快さ、眼前に現したる不二の山、目にも見よ、音にも聞け〜〜〜、と言う相手がいないのがちょっと寂しい(笑)。

新東名を東進すると、富士山はその位置を眼前からだんだんと左手に移してゆきます。それがまた趣深い。御殿場あたりまで富士山と併走です。

御殿場からは再び東名高速道路。眠たくなってきたので、横浜の港北パーキングエリアで一眠り。私、どこでも寝られる厚かましい体質、かつ、時間があればすぐに眠りに入ることができる体質で、「眠りの達人」を自称しているんですが(笑)、この体質が勉強や仕事にどれだけ役立ってきたかしれません。そして、長距離の運転の際にもこの上なく役立ちます。

以前、滋賀県だったかどこかの道の駅で昼寝していると、まわりが騒がしい。何だろうと思って目を覚ますと、私の寝ているベンチの周りに人が一杯。どうやらツーリング仲間の待ち合わせになっているベンチだった模様。どうやら知らない人に囲まれて、20分ぐらいグーグー寝ていたようで。すごいアホ顔をさらしていたと思うんですが、気にしちゃ生きていけません。

横浜のPA片隅のベンチは、有り難いことにそんなことはないようで、しばし快適な仮眠を取ることができました。

ここからは首都高速。猛烈な渋滞に巻き込まれるのは嫌なので、首都高速を利用することはあまりないんですが、今回はGW真っ只中。前もって見ておいた渋滞予測では、首都高はスムーズに流れていそうだったので、ここを介して常磐自動車道に出ることにしていた次第。

今回の旅の一つの(しょーもない)目標として「1000km先の目的地までナビや地図を一切見ないで行く」ということを掲げていたんですが、問題があるとすれば首都高速でした。不慣れな道路であるにもかかわらず、分岐点がたくさんあるからです。

一般的な高速道路の場合、かなり的確に表示板が出されていますから、それに従えば大体はOKなんですが、阪神高速や首都高速などの都市部高速道路は、そうも言っていられません。出口が右側にあったり、かなり短い距離で一気に三車線ぐらい寄らなくてはならなかったりしますので。出発前日、首都高ウェブサイトで各ジャンクションを予習しておいたんですが、その結果や如何に。

渋谷・六本木と眼下に見つつ谷町JCTを通過、次に霞ヶ関を越えて最高裁判所の上部を見ながら、三宅坂JCTを通過。皇居を横目に神田橋、江戸橋JCTをこなして両国JCTも通過。堀切JCTで首都高三郷線へ。そのまま常磐自動車道に突入。大成功でした。

しかし、首都高速といい、阪神高速といい、名古屋高速といい、都市高速というのはどうも狭苦しい道路です。大昔に出来た部分は規格が低く、圧迫感が強いんですよね。特に首都高速はもう全体的に限界を迎えている気がします。といって、どうしようもないんでしょうが……。

ところで、首都高速を走っていて楽しかったことが一つ。6号向島線は隅田川のほとりを走っているんですが(あの「う○こオブジェ」のあるところです)、表示板に「言問橋」という文字が見えました。「隅田川、言問って!在原業平やん!」

『伊勢物語』の九段には、在原業平が隅田川で歌を詠むシーンがあります。

名にし負はば いざこと問はむ 都鳥 わが思ふ人は ありやなしやと

もちろん伝承的な話でしょうし、この橋のたもとに実際に業平が来たとも思いません。しかし、関東で平安貴族(を偲ばせる場所)に会うというのはなかなか乙なものです。よく見知った人にばったり出会った気分。先の『伊勢物語』九段自体、旧知の都人と駿河国でバッタリ出会うという話でして、私も「わぁ、業平兄さん、お久しぶりですやんか〜」と声を掛けたい気分でした(笑)。

長くなってきたので、次回に続きます。

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