ここ数日、「ただちに健康被害が出ることはありません」というフレーズを耳にします。
この表現から読み取れる情報を、受験国語対策として考えてみましょう。かなり基礎的な内容なので、中学受験レベルです。
<問題>
傍線部「ただちに健康被害が出ることはありません」という表現から、読み取ることのできる内容を選べ。<選択肢>
1.ただちに健康被害が出ます。
2.放射線に被曝すると健康被害が出ます。
3.長期にわたれば健康被害が出ます。
4.長期にわたっても健康被害が出ることはありません。
5.即座に健康被害は出ません。
1.ただちに健康被害が出ます。
全く逆の内容になっています。もちろん間違いです。でも、実際の入試では、こういう選択肢が用意されていることがしばしばあります。少し難しい表現になっていると混乱してしまう人も。
2.放射線に被曝すると健康被害が出ます。
確かに関連はありそうですが、「ただちに健康被害が出ることはありません」という話題の前提になる部分です。本文全体を考えてよいのならば正解になる可能性はありますが、傍線部だけから読み取れという問題であれば、無関係なのでバツ。
3.長期にわたれば健康被害が出ます。
4.長期にわたっても健康被害が出ることはありません。
間違う人の多い選択肢です。傍線部は「直近」の話をしているだけで、「長期的」な話をしているわけではありません。つまり、「長期にわたって」の話は一切していません。本文中に書いていない・言及していない話題は、正解になり得ません。よってバツ。
5.即座に健康被害は出ません。
あまりにも簡単な言い換えですね。これが正解。でも、本当の入試問題だと結構あいまいな言い換えをしていたりするので、見えにくかったりします。
国語選択問題の解法として大切なこと、より根本的には、読解の基礎として大切なことは、「書かれていないことを勝手に読み取ってはいけない」ということです。
筆者・発話者の意図をよく考えること、つまり、何を話題にして何を話題にしていないかをよく考えることが、とても大切です。
政治家や官僚のスピーチには、ある事柄を話題にしているように見せつつ、実は話題にしていない(言及していない)ということがよくあります。もちろん、嘘をつかないという誠実な姿勢とも言えますが、悪く言えば保身のテクニックでもあります。
大人である以上、政府が正しいデータを公開しているかどうかも含めて、政府からのメッセージを「正確に」読み取れる力が必要だと考えます。
不安を煽るつもりは毛頭ありませんが、読解力が生死を分ける日が来るのかもしれません。そして、それは極めて不幸なことだと思います。