国際学力テスト・学習到達度調査(PISA)に思うこと

本日(2010.12.08)の新聞に、国際学力テスト「学習到達度調査」(PISA)の2009年度実施結果が掲載されています。

読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野にわたる調査なんですが、日本の順位は下記の通り。

(下記でご紹介する数値は、毎日新聞12月8日付朝刊からの引用です。)

読解力 8位 (2006年度調査では15位)
数学的リテラシー 9位 (2006年度調査では10位)
科学的リテラシー 5位 (2006年度調査では6位)

前回より順位が上昇していますので、関係者は胸をなで下ろしているんじゃないでしょうか。ただ、日本の場合、社会生活に支障が出るであろうと判断されるレベル1以下の生徒が結構多く、読解力では13.6パーセント、数学的リテラシーでは12.5パーセント、科学的リテラシーでは10.7パーセントに上るとのこと。

こうした層の増加が、将来の日本社会に大きな影響を与えるであろうと考えているんですが、またこの話は別の機会にでも。

個人的には、アジアの躍進が興味深いですね。少し試験結果を見てみましょう。

読解力ベスト5
1.上海 (中国としては不参加、地域的に自主参加)
2.韓国
3.フィンランド
4.香港 (中国としては不参加、地域的に自主参加)
5.シンガポール

数学的リテラシーベスト5
1.上海 (中国としては不参加、地域的に自主参加)
2.シンガポール
3.香港 (中国としては不参加、地域的に自主参加)
4.韓国
5.台湾

科学的リテラシーベスト5
1.上海 (中国としては不参加、地域的に自主参加)
2.フィンランド
3.香港 (中国としては不参加、地域的に自主参加)
4.シンガポール
5.日本

どうでしょう?アジア内における日本の相対的地位の低下が如実に表れている結果だと私は思います。

国力はトップ層だけで決まるものではありませんし、底辺層だけで決まるものでもありません。国民全体が国力を決定する以上、このPISAのように幅広くサンプリングした母集団による試験結果は、決して軽視できるものではないと考えます。

悲しいことですが、日本の相対的な競争力が右肩下がりになってゆくという可能性は高いでしょう。

国際学力テスト:実践強化で上海台頭 過熱受験、弊害も – 毎日jp(毎日新聞)
http://mainichi.jp/life/edu/news/20101208ddm010100133000c.html

上記記事から、中国・韓国に関する部分を少し引用してみましょう。

初参加の上海が読解力、数学的リテラシー(活用力)、科学的リテラシーの全分野で1位に立った。しかもいずれの分野でも成績上位者が多く、下位者が極端に少ないのが特徴だ。日本のライバル・韓国も引き続き上位を維持している。世界トップの学力の背景を探った。

(中略)

2~3年制の専門学校を含めても高等教育への進学率は23%(08年)と、約8割の日本とは大きな開きがある。このため「狭き門を目指して小学校段階から競争する」(日暮准教授)状態は、「応試教育」から転換した今も解消できていない。しかも一人っ子政策で、子供にかける期待はヒートアップする。中でも経済力のある上海市民の教育熱は高く、高等教育への進学率は全国平均の2倍以上の50%を超す。

(中略)

韓国も同様だ。韓国の教育を研究している京都大学の石川裕之助教(比較教育学)は「塾通いが盛んな韓国では、学力の高さは公教育だけではなく私教育の成果でもあると言われている」と話す。
韓国は、日本以上に大学のブランド力が将来を左右する国で、小学生から塾通いが始まる。大学入試は思考力を問う論述問題が出るため、塾で対策を行い、結果的に、PISA型の学力も養われると石川助教は指摘する。
一方で、中国でも韓国でも学力を苦にした子供の自殺や高い教育費負担、家庭の経済力による格差などが社会問題になっている。

塾を運営している者からすると、「学力の高さは公教育だけではなく私教育の成果でもあると言われている」というところは強調したいところです(笑)。中国・韓国のようなあり方が良いか悪いかは別論として、両国と日本の差がどんどん付いていくのは当然の道理でしょう。

なお、上記記事には読解力などの問題例が掲載されています。15歳(高校1年生相当)が対象者ですが、問題は単純なものです。読解力問題で言えば、中堅中学の入試問題レベルといったところでしょうか。興味のある方はご覧下さい。

なお、お時間のある方は下記の関連記事もどうぞ。

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