「入試に合格するための勉強」はとても単純

この時期によく思うこと。

「入試に合格するための勉強」というのは、かなり単純なものなんですよね。少なくとも、大まかな戦略を立てるという面では、極めて単純な事柄です。

1.志望校がどんな人に入学してもらいたがっているかを知る
2.自分をそういう人に仕立てる

それだけです。それ以外の何ものでもない。

私は上記のことをまとめて、いつも「受験校にフィットせよ」と表現しています。大きな戦略としてはそれだけです。本当に単純。

ただ、戦略を立てるのは簡単でも、それを実行するのはとても難しい。そこで私たちのような指導機関の出番、という訳です。

「志望校がどんな人に入学してもらいたがっているかを知る」

こちらは入試問題を研究する、というと大げさですが、詳細に調べることが最も重要な手段となります。国語を例にしましょう。読まねばならない文章の量はそれほど多くないが、かなり記述量が多い問題であれば、精密に文章を読み込めて、記述力のある人を生徒として迎え入れたいのでしょう。試験時間に比して大量の文章と問題を課す学校であれば、事務処理能力の高い人を求めている。

他にも学校が公表しているアドミッション・ポリシーを読んだり、在校生から学校での指導の実際を聞いたりするのも有用でしょう。アドミッション・ポリシーは正に「こうした生徒が欲しい」という公式なステートメントですし、学校での指導は先生方の理想の現実化であるわけですから。もちろん普通の学校ならば、指導にあたる先生方が入試問題を作成されていますしね。

実際、入試を突破した在校生に入学後の授業の様子を聞いてみると、「なるほど、そういう先生方ならこういう入試問題を作成されるだろうな」と腑に落ちることがよくあります。

こうした「学校の求める人間像」を調べる・読み取ることは不可欠だと思いますが、そこが難しいと思われる場合は、プロの力を借りるのが一番いいと思います。もちろん、当塾もそのお力になれると思います。

「自分をそういう人に仕立てる」

問題はこちらです。

もちろん、勉強を開始した時に「志望校が求めている人間像」、もっと端的に言えば、学校が求めている学力を備えている人はほとんどいないでしょう。それゆえ、「志望校が求めている人間像」と自分の間にあるギャップを埋めていく作業が必要となります。それこそが「受験勉強」というものだと思います。というか、それ以外の何ものでもない。

ただ、 ギャップを埋める具体的な方法がなかなかつかめないことが多いのではないかと思います。この辺のイメージが具体的につかめている人達は、受験勉強が非常にスムーズに進むわけです。勉強が進めば進むほど、合格への道のりがクリアになっていく。

しかし、その辺がしっかりと把握できてない人達は、勉強が迷走してしまう。行き当たりばったりの勉強をしてしまい、模試の成績に一喜一憂する。あの参考書が良いと言われれば買ってはつまみ食い、あの塾が良いと言われればちょっと通ってみて、また別の塾が良いと言われればそちらに移ってみる。

これはとても危険なパターンで、大体の場合は不本意な結末を迎えてしまうわけです。勉強をサボっているわけではなく、なまじ一生懸命勉強しているだけに、本人としてもご家庭としても非常に不可解に思われていると思うんですが、外部から客観視すると当然の事柄であるわけです。

大阪から東京に行きたいなら、東向きの新幹線に乗るか飛行機に乗るべきですが、なぜか西に向かって自転車で走り出す人は数知れません。自転車を漕いでも時間的に間に合わないですよ、西に向かってもゴールから離れるばかりですよと思うんですが……。

もちろん、志望校が求めている像と自分の力量の間に大き過ぎるギャップがある場合は、受験期間内にギャップが埋まりきらないでしょう。本人の能力的に、どうしてもギャップを埋めかねるということもあり得ると思います。その場合は、適切な志望校に変更することが必要ですが、設定したギャップも適切で、本人の能力にも問題はないのに、努力が迷走してしまって不合格の憂き目を見てしまうという事態は避けて欲しいなと思っています。

普段思っているところを言語化すると、こんな感じでしょうか。

進学塾のカリキュラムをこなせば必ず合格する?

どうしてこんな話を書き出したかと申しますと、上記のような観点をすっ飛ばして、「進学塾の言うことさえ聞いていれば必ず合格する」「進学塾のカリキュラムをこなせば必ず合格する」と勘違いしてしまう人が多いように思うからなんです。

ハッキリ言っておきますが、そんなことでは合格は覚束ないでしょう。志望校は人それぞれ。学力・ 力量も人それぞれ。したがってギャップのあり方・埋め方も人それぞれ。

大学受験の話になりますが、大手予備校の「○○大学コース」に在籍していた高校生・浪人生で、実際に○○大学に合格した人は1000人中2〜3人だったという話を聞いたことがあります。どこまで本当かは知りませんが、あり得そうな話だと思います。そのクラスに絞ってみれば合格率1%未満。ただ、より上位の大学を志望する学生が滑り止めとして○○大学に合格するので、大手予備校全体で見ると、結構な合格者数がいるというからくり。

「志望校の求める像」と「自分の今の力量」。受験生には、この二つを不断に考え続けて欲しい、寝ても覚めてもそればっかり考えて欲しいんです(中学受験の場合は保護者様も協力される必要があるでしょう)。そしてそのギャップを埋めることに全力を尽くす。さすれば道は開かれん。

そういう意味で、「入試に合格するための勉強」というのは、とてもシンプルなものだと思っています。もちろん、実行するのは大変ですけどね。

頑張っている受験生やご家庭に幸福が訪れますように。