上方を中心として栄えた元禄文化の重要人物は三人います。俳諧の松尾芭蕉、浄瑠璃の近松門左衛門、浮世草子の井原西鶴。この三人が元禄文化の屋台骨だと言っても過言ではありません。ここ大事だから、必ず覚えておきましょうね。それぞれの代表作は…云々。
と、いきなり文学史の授業から始めてしまいましたが、高校生に古典を教える際は、ある程度作品のバックグラウンドを認識してもらった方がよいので、文学史の簡単な説明は欠かせません。
日本文学史的に見て、特に実りが大きかったのは元禄期、というのが私の持論ですが、意外なことに、この三人の著作(の本質的な部分)は、大学入試(古典)にはあまり出てきません。
私が思うに、以下が原因なのでしょう。
芭蕉:「俳諧」の性質上、主観的な読解を許す余地が大きいため、試験問題を作成しにくい。
近松:「浄瑠璃」が一般庶民向けの娯楽作品であったことから、入試問題としてはストーリーの把握が容易すぎる。内容的にも男女のドロドロした情愛が多くて高校生には不適切と思われがち。
西鶴:文章が才気走りすぎていて、高校生レベルだと、文章の真意を汲むことが難しい。
じゃ、受験生としては、この辺あんまり勉強しなくていいのでは?と聞かれそうです。確かにあまり力を割くべき分野ではないでしょうね。実際、古文の問題集でも扱いが薄くなっています。
しかし、受験や指導を離れて気楽に読んでみると、大変面白い三人です。特に西鶴ほど面白い作家はいません。日本の誇る天才小説家だと私は思います。高校生時代には全く興味の湧かなかった西鶴ですが、二十歳を超えると良さが分かるようになりました。今では、愛しく感じられる作家・尊敬の対象になっています。
ちょっと話がそれてきたので、西鶴や近松の話は別項にて。