天才 井原西鶴 Part1

(「芭蕉・近松・西鶴と大学入試」と関連した記事です。)

「西鶴?はいはい、大阪商人の鏡でっしゃろ。始末・倹約は美徳でんな。」
「サイカク?あぁ、あの好色話ばっかり書いた人でしょう?」

完全な間違いとは言いませんが、こうした認識が広まっているのは悲しいことだと思います。些末な部分がデフォルメされて伝わっている。

西鶴の概略は、「17世紀半ばに大坂の富裕な商家に生まれ、派手なパフォーマンスもしばしば行う俳諧師として活躍。家庭的な不幸もあったが、徐々に軸足を浮世草子(今で言う小説)に移し、多くの読者を得る。」といったところでしょう。

しかし、こうした教科書的な説明からは彼の魅力は伝わってきません。私の考える西鶴の魅力は次のようなところです。

主に「欲望」という観点から、人間をえぐるように鋭く観察する(リアリズムですね)。

・そうした観察・理解を、ある時はきらびやかな詞章で、ある時はストレートに知性的な文章で表現する。

真面目な顔をしながら、笑いを誘う場面や表現をそこらじゅうに仕掛ける。

こんなモダンな作家が17世紀の大坂にいたということを考えるだけでも、本当に楽しくなってきます。しかも、この作家を理解する知的な読者が大勢いた!これは、大坂が経済的に日本の中心をなす都市であったことと無関係ではないと思います。(ちなみに、「カネを介してモノを見ることは人間を知性的にする」という説が司馬遼太郎のエッセイにしばしば出てきます。)

長くなったのでPart2へ。