生徒にどこまで教えるか「喜ぶ」と「説ぶ」

先日小学生の漢字の採点をしていた時の話です。

ある生徒が、「よろこぶ」を漢字にするという問題で、「説ぶ」と解答を書いていました。むむむ。

実は、「説」には「よろこぶ」という訓読みがあります。

「不亦説乎」(またよろこばしからずや=なんとうれしいことではないか)という論語に出てくる表現なんかは、高校生なら一度は習う表現だと思います。

もし書取問題の他の部分が全問正解なら、小学生であっても「この漢字の特別な読みを知ってるの?すごいね!」と褒めて正解にするところです。もちろん、「学校では(採点する先生が知らない可能性があるから)書かないように」という注意も忘れずにしておく必要がありますが……。

ただ、今回は残念ながら、他の書取問題を見るとぼろぼろの出来でしたので、単純な間違いだと判断してバツを付け、「喜ぶ」と正答を示すに止めました。基本が身に付いていない生徒に、特殊な・応用的なことを教えるのは、却って学力向上を阻害する事になるからです。

どこまで教えるか・どこまでしか教えないか。これは教える側の技量が問われるところだと思います。実際、当塾では、同じ教材を使っていても、教える内容は生徒によってかなり変えているわけです。

このあたりは指導経験による差が出てくるところだと思いますが、悩んでいらっしゃる保護者様がいらっしゃれば、こんな基準をもとにお考えいただければよいのではないかと存じます。

「総合的に見て、そのことを教える事によって、子どもの学力が伸びるか否か」

善かれと思って教えても、それによって不要な混乱を招いたり、集中力を欠かせることになるのなら、教えない方がお互いのためです。今はその知識を身に付けられないかもしれませんが、ご安心を。ちゃんと勉強していれば、またその知識・論点に触れる機会が必ずやってきます。

なお、当塾の場合、難解な内容も青天井でOKですが、基本的な内容も手抜かりなく指導いたしておりますので、ご安心下さい(ちょっと宣伝)。


もっと「よろこぶ」の同訓異字について教えろって?

そういう向きには『角川新字源』の付録にある「同訓異義」がとても便利です。該当部分を少し拝借して掲載しておきますが、漢検1級受検者なら、これぐらいの漢字は知っておきたいところですね。エヘン。

なお、『角川新字源』はお奨めできる漢和辞典の一つです。そうそう、また漢和辞典の話も書かないとね!