国語の問題は設問より先に本文・出題文をよく読むべき

小学生の国語を指導していると、設問だけを見て、本文(出題文)の方をほとんど見ないという子が時々います。つまり、設問を先に見て、その問題に関する部分だけを本文から見つけ出して、解答を作ろうというわけです。

確かに、低学年向けの問題集や、大手塾の模試にはそれで十分対処可能な問題があることは事実です。そして、それらを素早く「解く」という観点から、「出題文よりも先に設問を読んで要領良く解いていけ」という指導がなされることもあるのだろうと思います。

ただ、それではやっぱりまずい。基本的には、出題された文章をしっかり読み取って全体的に理解した上で、問題に取り組むべきだと思います。

少なくとも、筆者は文章を断片的に読んでもらおうと思って書いているわけではありませんし、(模試ではなく)入試の出題者の意図を考えてみても、文章を細切れに読んでもらいたいなどと思ってはいらっしゃらないでしょう。

実際、難関中学の入試問題を見ていると、出題文章全体を把握していないと上手く書けない問題が多くあります。設問中に「本文全体を読んで答えなさい」という注意がなされている問題もめずらしくはありません。

これは国語科の先生方が、「傍線部前後の部分だけを見て、そこから関係のありそうな部分を適当に引っ張ってきて解答に仕立て上げるレベルじゃダメですよ」というメッセージを与えてくださっていると考えるべきです(見方を変えれば、難関中学であっても、上記のような安易な解答を作ってしまう受験生が非常に多いということが伺える)。

大体、社会のリーダーを育てようという気概を持った難関中学が、傍線の前後だけを抜き出して適当にまとめた小器用な解答を喜ぶと思いますか?私が入試問題作成者なら、そうした小器用な解答を作る受験生を上手く落とす問題を作ります(受験生や塾には恨まれそうですが)。その方が、中学入学以降伸びてゆく生徒が取れるはずですから。

小学生には、もっと大きく文章をつかんで欲しいと思うんですよね。まだまだ先は長いんですから、こぢんまりとまとまらなくていい。小さくまとまらないで欲しい。文章をしっかり読んで、「なるほど、この人はこういうことが言いたいんだね」という認識を持ってから問題に取り掛かるほうが、時間はかかれど正答率は高くなりますし、それこそがいわゆる難関中学の国語科の先生方が求めていらっしゃる姿勢だろうと思います。

もちろん、入試には時間の制限がありますから、問題を先にサッと見てから出題文に取り組むということを禁じようとまでは思いません。「後でこういうことが問われるんだな→じゃあこういうことが重要部分になりそうだぞ」といった先入観を持ってもらうことも(それが合うという生徒には)禁じていません。本文読解の途中で問題を見て、その場ですぐ解けそうなら、解いても構いません。

ただやっぱり、文章の大きな流れを理解し、筆者の意見を把握することこそが、基本になるということをご理解いただければと思います。


生徒さんが持って来てくれる模試資料を見て、一番問題に思うのは「前後だけちらちら見れば解答ができてしまう」という事なんですが、採点・指導の便宜もあるでしょうから、やむを得ないところがあるのも理解できます。ただ、「出題文全体」という視野を欠いたまま問題を解く、しかもそれで高得点が取れてしまうという問題・指導に慣れきってしまうと、入試本番で大変なことになってしまう可能性があることだけは注意しておくべきです。

模試では上々の偏差値だったのに、志望校の入試過去問を解いてみると不思議なほど取れない、というご相談を受けることがよくありますが、この場合、上述のような落とし穴にはまってしまっていることがほとんどです。

私はこういうケースを「稽古場大関(練習段階では上手にできるのに本番ではからっきし力が出せない人)」ならぬ「模試大関」と密かに呼んでいるんですが、この「模試大関」、中学受験では結構見受けるケースです。

入試が近くなってくる10月ごろからは、少なくとも国語に関しては、あまり中学入試模試の偏差値は気になさらなくても構わないと思います。いや、無視してくださって結構です(笑)。

志望校の入試過去問にしっかりフィットして得点できるようにする、それこそが入試本番までのトレーニングの主眼。今までの勉強はそのためにあったといっても過言ではありません。

中学受験生諸君には、過去の入試問題を重視して、入試本番という土俵の上でがっちりと勝利をつかめる「大関」になってもらいたいと願っています。どすこい。