一番男前な声

いきなりですが、「男前な声」ってありますよね。渋くて深みがあって包容力に満ちていて、みたいな声。

女性が魅了されるのはもちろん、男からしてもカッコいい声だな〜、俺もこんな声だったら良かったのにな〜、という声です。

私が思う最も「男前な声」の持ち主は、エルヴィス・コステロ (Elvis Costello)。私はもうずいぶん前からこの人のファンで、かれこれ30年以上アルバムを聴いてきました。ライブも確か2回は見ているはず。

1970年代のデビュー当時は、パンク・ロックのミュージシャンと目されていた彼ですが、そんな枠に収まる才能ではなかったんですよね。デビューアルバムの頃から、明らかに凡百のパンク・ミュージシャンとは格が違ってましたから。音楽全体への造詣の深さだけではなく、音楽への執着心が並大抵でないとでもいいますか。

今や、彼の事をパンク・ミュージシャンと捉える人は皆無でしょう。音楽の神に祝福された、守備範囲の広い最高の音楽家、大多数の人はそう評するんじゃないでしょうか。

数日前、ポール・マッカートニーのインタビューを読んでいたんですが、共演した音楽家の中で、最もジョン・レノンに近い人は誰ですかと問われて、名を挙げていたのがエルヴィス・コステロでした。コステロも最大級の賛辞と受け取ったのではないかな。

そんなこんなで、いくらでも書きたい話はあるんですが、興味のある方には自分でお調べいただくとしましょう。


エルヴィス・コステロの魅力的な声の話に戻ります。

高校生の頃の私、コステロのアルバムをよく聴いていたんですが、当時中学生の妹(妹もかなりの音楽好きなのです)曰く、「この人の声ってめっちゃ男前やな〜と思って、雑誌とかで写真を見てみたけど、なんか思ってたんと全然違ってた……。」

どんなイケメンを想像していたんでしょうか。男の私からすると、コステロは我が道を行く才能に溢れた音楽家として最高にかっこよく見えるんですが、どうもそうは見えなかったようで……。確かにトレードマークの眼鏡は「食い倒れ人形」ぽくはあるけれど(笑)。

ただやっぱり、コステロの声が「超男前」である点では、私も妹も意見は一致。それから30年が経った今でも、彼ほどハンサムな声の人はなかなかいないと私は思っています。

私もこんな声に生まれてみたかったなと思うんですが、まあ悪声に生まれついた以上、(お聞き苦しいとは思いますが)授業の内容で勝負するしかないですね……。


名曲が多すぎて、どの曲を紹介すればいいか迷うんですが、バート・バカラックと共演したこの曲なんてどうでしょうか。1998年に発表されたアルバム “Painted from Memory” は、これでもかこれでもかというバカラック節&コステロの名唱。昨日ふと思い出して聴いていたんですが、濃すぎる名作。

Elvis Costello & Burt Bacharach – I Still Have That Other Girl


やっぱりこの曲は外せないですかね。デビュー・アルバムに収録されている名曲。コステロの書く歌詞はかなり複雑で(ダブルミーニングやトリプルミーニングが多用される)、ネイティブでない私にはお手上げのところもあるんですが、この曲についてはピーター・バラカンさんが解説していた記事を読んで、目からうろこが落ちた事があります。要するに、すっごくまわりくどく女性への未練と嫌味を歌っています(笑)。

ELVIS COSTELLO Alison 1977


これも彼がかなり若い頃の曲。怒れるコステロ全開で大好きな曲なんですよね。ギターが性急なレゲエ・ビートを刻むんですが、そのビートもやっぱり並大抵ではありません。大音量のカーステレオでこの曲を聴いている奴を見かけたら、それは多分私です。

Elvis Costello & The Attractions – (I Don’t Want To Go To) Chelsea