国語塾の日本語レッスン#2

今日は紛らわしい表現について。

それぞれ、A・Bのいずれが正解かを考えてみて下さい。

<1問目>
A:彼の発言は当を得ている。
B:彼の発言は当を射ている。

<2問目>
A:彼の発言は的を得ている。
B:彼の発言は的を射ている。

<3問目>
A:彼の発言は正鵠を得ている。
B:彼の発言は正鵠を射ている。

では解説です。

<1問目>
正解:A
「当を得る(とうをえる)」が正確な表現です。
「当」とは「道理にかなっていること」を表しており(正当・妥当といった熟語を考えてみて下さい)、「当を得る」も同じく「道理にかなっていること」を表すことになります。

<2問目>
正解:B
「的を射る(まとをいる)」が正確な表現です。
「的(まと)」は「標的」・「物事の核心」を表しており、「的を射る」で「物事の肝心な点を確実にとらえる」という意味になります。

上記2問については、
「当(とう)」は「道理」だから「得る」もの、
「的(まと)」は「標的」だから「射る」もの、
と覚えれば間違いにくいのではないでしょうか。

これで、「当を射る」とか「的を得る」といった誤用は避けられますね。はい、次の問題。

<3問目>
正解:AとB
「正鵠(せいこく)」とは、少し聞き慣れない言葉ですが、「弓の的の中央の黒ぼし」のことです。上記の考えからいくと、「射る」の方が良さそうですが、「得る」もOKということになっています。実際、森鴎外の小説の中にも「正鵠を得る」という表現が出てきます。

まぁ、「ど真ん中ゲットだぜ!」という感じで「得る」も使えると覚えておいてもらうとよいでしょう。

「正鵠を射る」であれ、「正鵠を得る」であれ、意味としては、「物事の肝心な点を確実にとらえる」ということになります。つまり「的を射る」と同じ意味ですね。

それでは例文をば。

・中川君の答案はどうも当を得ない。酒にでも酔って答案を書いたのか。
的を射た記者の質問に、中川君はたじろいだ。

最後はちょっと時事ネタになってしまいました。