道頓堀川のカーネル・サンダース

道頓堀川でケンタッキー・フライド・チキンのカーネル・サンダース人形が「救出」されたようですね。1985年に阪神が優勝した際、熱狂したファンが担ぎ上げ、戎橋から道頓堀川に放り込み、そのまま行方不明になっていたという人形です。

この後、阪神が日本一に輝くことはなく、「カーネル・サンダースの呪い」として恐れられていた(?)、ということは皆さんもよくご存知かと思います。

新聞やネットで写真を見ましたが、何というか…ただの汚い人形です。こんな見苦しいものをニュースで取り上げるなよ、と思ったのは私だけではないはず。

ふと、1985年のことを思い出しました。

その頃、私は高校1年生。母校の高津高校には、生徒・教師を問わず、何故か熱狂的な阪神タイガースファンが多く、阪神が快進撃を続けるとともに、学内のボルテージも上がっていったのでした。

休み時間に生徒同士が阪神話に花を咲かせているのはもちろん、先生方も「阪神が優勝したら授業なんかどうでもええ。みんな自習にしたるからどこへでも祝いに行け!」という始末。

ちなみに私が在籍していた頃の高津高校は自由極まりない学校でして、「自習時間」は勝手に校外に外出してよい時間。上六の喫茶店でだべるなり、本屋で立ち読みするなり、クラブの部室で寝るなり、好きに過ごしてよいことになっておりました。もちろん真面目に勉強してもよいのですが…。その後、本当にタイガースは優勝し、多数の先生方が授業を自主的に「自習時間」とされたのは楽しい思い出です。

さてさて、当時習っていた英語の某先生もタイガースの熱狂的ファン。某先生の授業は、前回に指名された生徒が、先生指定のテーマにしたがって英文を書いてくる→先生がその英文を講評・批評する、というところから始まるスタイルでした。

先生「阪神のリーグ優勝も目前だ!悲願達成間近だ!」

生徒達「うぉ~~!」

先生「そういうわけで、次回の英作文のテーマは『阪神優勝』とするぞ。担当は宮田にしよう。ちゃんと書いておくように。」

私「えっ?もっとタイガースに詳しい適役がいると思いますが…。」

先生「いや、順番的にお前だからなぁ。ちゃんと書いてこい。」

私「はい…。」

紅顔の美少年だった私は(せめてブログではそういうことにしておいて下さい)、困りました。というのも、プロ野球には全くと言ってよいほど興味が無く、皆が「阪神、阪神」と熱狂しているのを苦々しい気持ちで見ていたぐらいですから。「巨人」ファンなら、まだ同じ土俵で議論できそうですが、そもそも「野球」に全然興味がないので、どうしようもありません。

しぶしぶ書いた英文は、概略こんな内容だったと思います。

「野球というような、球を投げて打つだけの単純な競技に、どうして人は熱狂するのであろうか。私からすると、非常に愚かしいことに思えてならない。スポーツへの熱狂は、ややもすると、単純に何かを盲信することにつながるのではないか。恐ろしいことである。なお、私は野球に興味がないだけであり、阪神が負ければよいとまでは思っていないので、ファンの皆は機嫌を損ねないで欲しい。」

なんて嫌味なヤツ(笑)。

黒板に書いておいた英作文を見た先生は、みるみる顔を曇らせ、私は先生からの猛攻撃を受けたのでした。「馬鹿者!」「なんだこれは!」「こんなの阪神優勝と関係ないではないか!」

ただ、こういう意見を尊重してくれる雅量のある先生でしたので(そうでなければいくら私でもこんな文章は書きません)、一応お許し頂けた記憶があります。文法や単語といった英語表現自体はバッチリだったのもあるかもしれませんが。

何でも、引き上げたサンダース人形、甲子園球場の記念館に飾る話まであるとか。本気ですか?