随分前から総理大臣の漢字力が問題になっていますね。
マスコミや世間一般としては、「総理までつとめながら、この漢字力は何だ、もっと勉強しろ」といったところが多数意見であるような気がします。
しかし、こうも言えるんじゃないでしょうか。
「日本という国は、このレベルの漢字力(ひいては教養)の人でも、総理大臣がつとまる国である。」
これはある意味、幸せなことである気がしますね。リーダーの高度な知性やカリスマ性やらに頼らずとも、陰でスタッフが事を運んでゆき、国民も原則としてそれを問題視しない。
逆に、内戦に明け暮れる前途多難な国などは、上述のようなリーダーがまさに命がけで事に当たらねばならないわけですから。
さてさて、政治問題に踏み込みそうなので、話頭を転じましょう。
昨日(2009.01.20)の参院委員会で、首相が「未曾有」を「みぞう」と正しく音読し、委員たちがどよめいた、という報道がありました。
http://www.asahi.com/politics/update/0120/TKY200901200167.html
同じ場で、野党議員が、首相が月刊誌に「寄稿」した文章から、難しい漢字を抜き出して「本当に首相が書いたのか」と詰め寄ったとの由。まぁ、その真偽は自明なので、どうでもよいとも言えますが(笑)、引用した次のリストを見て下さい。
(1)就中
(2)唯々諾々
(3)揶揄
(4)畢竟
(5)叱咤激励
(6)中興の祖
(7)窶し
(8)朝令暮改
(9)愚弄
(10)合従連衡
(11)乾坤一擲
(12)面目躍如
(出典 石井一事務所作成)【回答】
(1)なかんずく
(2)いいだくだく
(3)やゆ
(4)ひっきょう
(5)しったげきれい
(6)ちゅうこうのそ
(7)やつし
(8)ちょうれいぼかい
(9)ぐろう
(10)がっしょうれんこう
(11)けんこんいってき
(12)めんぼくやくじょ
(読みは「広辞苑第6版」から)
※上記asahi.comの記事より引用
(読みを広辞苑から引用するなら「回答」より「解答」の方がいいと思いますが、朝日新聞の考えはさておき)
私にとっては(仕事柄)どれも簡単に思えますが、一般的にはちょっと堅苦しい言葉ですね。
で、気になるのは12番。意味は「いかにもその人に似つかわしく、立派であるようす」ですが、私としては「めんもくやくじょ」と読みたいところ。覚え間違っていたかな?と思い、調べてみました。
「めんぼくやくじょ」で掲載している辞書
岩波書店 広辞苑
「めんもくやくじょ」で掲載している辞書
三省堂 大辞林
小学館 大辞泉
学研 国語大辞典
漢検 四字熟語辞典
学研 故事諺辞典(「めんぼく」とも読めるとの注あり)
(※下記の辞書は「めんぼく」または「めんもく」という語で立項しており、単独の立項がないので除外。 岩波国語辞典 / 三省堂新明解国語辞典 / 大修館書店明鏡国語辞典)
どうでしょうか?多数決で言えば、「めんもくやくじょ」ですよね。ただ、広辞苑は権威がありますしね…。
とりあえず両方正解、というのが無難な結論でしょうか。
今日は、国語塾らしく、国語問題に着地したところで終了です。