京大の入試問題流出事件、随分と大きな事件になってしまいましたね。2月27日の朝一でニュースを読んで、すぐブログ記事(京大入試問題流出事件)を書いたんですが、原則として、そのときに考えたことが間違っているとは思いません。つまり、今回の不正者は教育機関の中だけはなく、司法の場でちょっと頭を冷やしてもらうのが妥当だと考えます。
もちろん、不正者を起訴すべきだとまで言うつもりはありません(社会的制裁は十分に受けているので、不起訴になる可能性が高いと思われる)。大学の中で収めておくべき問題ではないということです。
事件発生後約1週間が経過しましたが、ニュースやネット世論を見ていると、上記のようには思っていない人が意外に多いということに気づきます。ここでは「カンニング温情主義」とでも名付けておきましょう。
例えば、次のようなニュース。
【入試投稿事件】「騒いで未成年逮捕させた」「監督こそ問題」京大に年配者らから抗議殺到 – MSN産経ニュース
京都大や早稲田大学など4大学の入試問題が試験時間中にインターネットの質問サイト「ヤフー知恵袋」に投稿された事件で、偽計業務妨害容疑で京都府警が仙台市内の男子予備校生(19)を逮捕してから一夜明けた4日、京都大に抗議の電話が殺到した。
京大によると、4日午前8時半ごろから一般からの電話に応じているが、「京大が騒いで未成年者を逮捕させた」「京大の監督態勢こそ問題があったのではないか」との抗議や苦情が、受け付け開始1時間ほどで約30件に及び、その後も鳴りやまないという。
内容はすべてが京大の対応を非難したもので、年配者の方の声が多いという。
(上記MSN産経ニュースより引用)
確かに、監督者にも不備はあったのかもしれません。しかし、第一に責められるべきは、不正を働いた受験生ですよね。こういうクレーム電話を大学にかける人の発想がよくわからない。
「万引きは悪くない、万引きされる店が悪い。」
「放火犯は悪くない、燃えやすいものを置いた人が悪い。」
抗議電話をする人達は、こういう類の理論を笑うことが出来ないんじゃないでしょうか。いや、ひょっとしたら、本気で上記のように考えているのかもしれませんが……。少なくとも自分の子どもには、こうした考えのもとになる「カンニング温情主義」を持ってもらいたくはありません。
確かに、未成年をここまで追いつめて良いのか、という気持ちは分からないでもありません。しかし、未成年といっても19歳です。京大を受験する以上、「大学受験のルールに従わねばならない=ズルをしてはいけない=ズルが見付かれば大問題になる」ということを十分理解しているはず。
加えて、警察や裁判所の権限無くして、事実を究明することは難しかったでしょう(携帯電話通信記録の調査など)。場合によっては、韓国で実際に発生したように、金銭授受を伴う大規模な不正入試事件という可能性もあったわけです。別に大学の肩を持とうとは思いませんが、今回の大学側の措置は、何らおかしな所はないと思うのです。
もちろん、受験生を指導する立場からすると、不正合格者のせいで真面目にやっている受験生が不合格になりうるということが、最も腹立たしいことではあります。
大学側の対応に抗議してきたのは年配の方が多いというのも、何だか気になります。ただでさえ大変な現場の仕事を増やしてどうするんですか……。
なお、京大の松本総長は「更生していただきたい」とコメントしていらっしゃいましたが、これは、「もし本当に本学に入学したければ、もう一度正々堂々実力で入試に挑め、過去の過ちによって不合格にするものではない」という趣旨だと思います。こちらが正しい「温情」ではないでしょうか。