京大入試問題流出事件

2月25日・26日と行われた国立大学の前期試験。京大の入試問題が「入学試験実施中」に、質問を装ってインターネットの掲示板に書き込まれたとのニュースを読みました。しかもそのうちのいくつかには、「入学試験実施中」に解答が寄せられたとのこと。

何だか来るところまで来たという感じですね。電子機器やネット環境の発達、受験生のモラルの低下、様々なことが背景にあるんでしょうが、とりあえずは犯人を特定するところから始めるしかないでしょう(偽計業務妨害罪が成立しそうなので、あえて「犯人」としておきます)。

早稲田や同志社の入試でも、同一のハンドルネーム(ネット上の名前とお考え下さい)からの質問書き込みがあったらしいんですが、犯人は受験生なのか、愉快犯なのか、受験産業関係者なのか。単独犯なのか複数犯なのか。捜査を待つしかありません。

私が思うのは、こうした不正が発生したときにかかる「コスト」のことです。

まず、今回の入試で、不正の利益を享受した人間を合格させてはならないわけですから、そうした人間を探し出し排除するという時間的・労力的なコストが大学当局側にかかります。

また、来年以降の入試では、同様の事態が発生することを避けるため、より入念な監督をする必要があるでしょう。具体的には監督人員を増員するなどせねばならないかもしれません。この場合、入試にかかる人件費は今年より上がるはず。京大の入試監督は教官がなさっているんですが、入試に携わらなくともよいレベルの人まで駆り出されたりすれば、その人達の研究・教育活動の妨げにもなるでしょう。もちろん、京大だけでなく、他大学でも監督は強化されるはずですから、そのコストは多大なものになるはず。

あと、受験生にも厳重なチェックが入りますから、あれこれといらぬ詮索を受けねばならないかもしれません。

誰か一人の軽い面白半分が(今回の場合軽くはないですが)、社会に大きなコストを支払わせる、というのは本当に不愉快ですよね。


ちょっと思い出話になりますが、私の学生時代は、少なくとも法学部に関しては、専門課程の授業であっても、特に履修登録は必要ありませんでした。授業は勝手に出ればよし。試験は、当日教室に行って学籍番号と氏名をカードに書いて渡して受けるだけ。

ある意味、学生を信じ切った極めてアバウトなシステムです。でも、これって大学側・教官側にかかる管理コストは極めて低いですよね。

その代わりに、替え玉受験、つまり、「俺の代わりに民法第1部の試験受けてくれない?」とか、「5000円で刑法第1部の試験の単位を代わりに取ってあげるよ」といったことも、実際上可能だったわけです。

当然のことながら、大多数の人間はそんな不正はせず(私もですよ)、ちゃんと自分で試験を受けて単位を取るわけですが、中にはそうした不正をやってしまう学生もいたのかもしれません。

それが証拠に、在籍途中から、試験を受けるには、履修登録や入室前の学生証確認が必要になりました。他大学では当然のことなのかもしれませんが、先述したような緩いシステムに慣れきっていた私たちは、ブーブー文句を垂れた覚えがあります(笑)。大学事務局や教官サイドからしても、仕事は増えたはず。

もちろん、不正を許してはいけませんが、不正を完璧に防ごうとすると多大なコストがかかる、特に、真面目にやっている大部分の人にそのしわ寄せが行く、ということは世の真実です。

犯人には、司法の場で、ちょっと頭を冷やしてもらわないとなりませんね。