佐久間正英さんのこと

土曜日。朝早くから授業があるため、早めに起床。ぼんやりした頭を醒ますため、iPhoneでオンラインのニュースに目を通していると、佐久間正英さんのお名前が。おや、何のニュースかなと読んでみて、愕然としました。スキルス胃癌で末期状態にあることをブログで告白されたとの由。

慌てて佐久間さんご自身のブログ記事を読みましたが、呆然とするしかありませんでした。

goodbye world – Masahide Sakuma

しばらくして、悲しみのような、怒りのような、何とも表現出来ない憤りが心の中に湧き上がり、その憤りも、佐久間さんの今置かれている状況の億分の一にすら届かない事がさらに切なく、叫びたいような気分で仕事の時間を迎えました。

もちろん私もプロの端くれですから、仕事にそんな感情の起伏は持ち込みません。しかし、対面授業を終えてから行っている授業準備の時間は、いくら心を集中させようとしても、目が字面を追うばかりでした。

佐久間さんと面識があるわけではありません。しかし、今年5月12日、神戸で早川義夫さんと佐久間正英さんのライブを見て、名状しがたいほどの感銘を受け、この3ヶ月間というもの、お二人の音楽を反芻し続けていました。今まで色々なコンサートや演劇を見てきましたが、ここまで心の中で反芻し続けた「うた・音」はありません。

お二人で演奏されている音盤で、持っていなかったものはすべて手に入れ、来る日も来る日も聴いていました。この3ヶ月間、お二人の音楽に浸っていたといっても過言ではありません。早川さんと佐久間さんの音楽はどこから来てどこに行くのか、どうしてこんなに魂を揺さぶるのか、そんなことばかり考えていました。

佐久間さんのギターは、鋭利な日本刀のよう。振るわれた刀の切っ先は聴き手の眉間の前数ミリをよぎったかと思うと、次の瞬間には聴き手の胸の中心を寸分違わず刺す。ギターとはなんと美しく狂おしい楽器なのか。ライブで早川さんも「僕がギタリストならこんな音を出したい、っていう音を出してくれるんです」と仰っていたんですが、楽器が全く弾けない私にも、そのお言葉は深く理解できました。

今、佐久間さんのブログ記事を読むと、私が見たライブの時点で既にご自身の病状をご存知でいらっしゃったご様子。何も知らぬ聴衆に、いつも通り誠実な音を届ける、その一事からも佐久間さんの音楽に対する真摯さが伝わってきて、今更ながら感謝の気持ちを覚えます。

そんな音楽家から演奏を奪うのは残酷に、あまりに残酷に過ぎます。佐久間さんの手術が成功し、今まで通りの演奏を聴かせてもらえるようになることを、そして、ご家族との穏やかな生活を取り戻されることを、心の底から願っています。

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