大阪府立トップ高校および文理学科の難易度

かつて大阪府では、府域を9つに分割し、府立高等学校についての学区としていました。1973年から2006年までの話です。私が中学生だった頃も9学区制でしたし、完全少人数制宮田塾を開塾した頃も9学区制でした。

それぞれの学区内で、偏差値的な基準によって高校のランク付けが行われており、各学区内のトップ高校は、東大京大阪大神大などの難関と呼ばれる国公立大学について一定以上の進学成績を収めていました。そういう意味で、ステイタスのある高校群だったと言えるでしょう。具体的に学校名を列挙すると、北野高校、茨木高校、大手前高校、四條畷高校、高津高校、天王寺高校、生野高校、三国丘高校、岸和田高校の9高校です。

2007年度からは府立公立高等学校の学区編成が変更され、4学区制となっていますが、依然として上記の9高校に豊中高校を加えた10高校は、特別な扱いを受けています。具体的には、各校に文理学科が設けられ、大学進学の面で特色を持たせるという扱いです。平たく言えば、旧トップ校に「特進クラス」を設けているような状態になっているわけです。ちなみに、各校の文理学科の定員は各学年のほぼ半数(160名)。また、この科については、学区制度は既に撤廃されています。

現在では、私立中学受験・私立中高一貫教育が一般化し、学力優秀層がそちらに流れる割合も高くなってきたため、かつてほどの威光はないかもしれませんが、一定以上の進学成績とステイタスは依然として保持している高校群だといってよいでしょう。

<参考記事>
大阪府立高校の進学特色校・文理科:国語塾・宮田塾のブログ

グローバルリーダーズハイスクール(進学指導特色校) in 大阪:国語塾・宮田塾のブログ

大阪府立高校文理学科の競争倍率(2012年前期入試):国語塾・宮田塾のブログ


塾稼業をしていると、塾生の保護者様をはじめ、その他の小中学生のお子さんをお持ちの方々から、我が子を大阪府立トップ高校に入れたいというお話をよく伺います。

代表も副代表も高津高校の卒業生ですし(Good old days)、色々な生徒さんをお預かりしてきましたから、大阪府立トップ高校の生徒の質や授業の質、現状は良くわかっているつもりです。

少し話はそれますが、当塾 (完全少人数制宮田塾) の一般小学生部門は、目先の小学生時点での成績向上だけに止まらず、公立中学校に進んだあと、上位に位置することを考えた指導を行っています。根本的な学力を育て、(大阪府立トップ高校を含めた)高校受験への基礎を築いてゆくのに最適な場であり、安心してお子様をお預けいただけると自負致しております。


当塾の宣伝はそれぐらいにして(笑)、この記事では、大阪府立トップ高校合格の難易度を、客観的な数字を元にして考えてみましょう。

2012年の時点で、進学を希望する中学3年生の数は、67380人。灘高などをはじめとする難関私立高校や国立高校に進学する生徒もいるはずですが、数としてはごく僅かなので無視しておきます。

大阪府立トップ高校(北野高校、茨木高校、大手前高校、四條畷高校、高津高校、天王寺高校、生野高校、三国丘高校、岸和田高校、豊中高校)についての定員は下記の通り。

  文理科  1600人
  普通科  1880人
  上記合計 3480人

とすると、文理科に合格するためには、単純計算で上位2.4%程度に位置しておく必要があります(1600÷67380≒2.37)。

また、普通科に合格するためには、上位5.2%程度に位置しておく必要があります(3480÷67380≒5.16)。

昔と異なり、中学受験の段階で成績優秀な層はある程度抜けていますから、実質的に見て少し楽な競争になっているとは思うんですが、数値的に見れば、依然として高いハードルであることがお分かりいただけるかと思います。

加えて、公立高校の場合、私立高校とは違って内申(中学校が付ける評定)が必要となります。大阪府立トップ高校を受験する場合、保健体育・美術・音楽・技術家庭などの副教科も含めて、ほぼオール5(10段階評価ならほぼオール10)でそろえたいところです。国語・数学・理科・社会・英語だけがいくら出来ても、副教科が出来なければ、試験制度上、上記高校に合格することはかなり困難です。


上位2.4パーセントを目指すということは、100人で競争して97人には打ち勝つということです。上位5.2パーセントを目指すと言うことは、100人で競争して95人には打ち勝つと言うことです。そんなにイージーな競争ではないということをご理解いただけるかと思います。

この数値は、大阪府立トップ高校の入試が、努力だけでなんとかなるというレベルの競争ではないことを物語っていると思います。生徒本人に、一定以上のキャパシティ・理解力がどうしても必要になるレベルの競争です。

とすれば、カリキュラムに従って勉強・努力すれば誰でも手が届くように宣伝するのは、行き過ぎだと言わざるを得ません。もっとはっきり言えば、塾の営業戦略にすぎません。「頑張ればきっと合格できる!無限の可能性でトップ高校を目指そう!」なんていう営業文句は話半分に聞いて欲しいと思います。

中学校の定期テストで悪くとも上位5パーセント程度には入っていないと、府立トップ高校合格ということが現実的な目標にはならない、と正確なデータを伝えることこそが、塾本来の役目だと思うのです(もちろん、それを目指す生徒に充実した指導を行うことも塾の役目です)。

公立トップ高校を目指すのであれば、小学生の頃から学力を育てていくことが必要なのは当然ですが、具体的には小学生の間に上位10%程度に入っていないと、勝負の土俵には立てないと考えておくべきです。国算理社は(5段階評価で)ほぼオール5で揃えておく必要があるということになります。

高校同期の面々と話していても、小学校や中学校の成績は、体育や美術などの副教科も含めてほぼオール5(10段階評価ならほぼオール10)に近い成績の者が大部分だった覚えがあります。もちろん、私たちもそうでした。

私の経験上、小学生の間にその範囲内の成績に収まっていない生徒が、府立トップ高校に合格したというケースを見たことはありません。仮に詰め込みに詰め込んで無理矢理合格させたとしても、留年を繰り返して退学という可能性は非常に高いでしょう。実際、私たちの同期でも、スレスレで合格したものの、留年を繰り返し自主退学した人が数名います。


上記のような意味で、軽い気持ちで府立トップ高校を目指す(目指させる)ことは、お薦めしません。よし、僕だったら・私だったら上位5パーセントまでに入れるよ!という気概を持つことができ、それに見合うキャパシティを持った生徒こそが目指すべき高校であると私たちは考えています。

しつこいようですが、このレベルの競争になると、保護者様がお尻を叩いてどうにか合格させるということは不可能です。塾のカリキュラムに乗っかりさえすれば合格するなんていう夢のような話もありません。この記事をお読みの保護者様には、いいかげんな塾の営業戦略に乗せられて泣きを見るより、お子様と共に、地に足の付いた勉強を進めていただきたいと思います。

中学校での活動に真面目に取り組み、勉強を着実に重ねた結果として、トップ高校に合格してゆくこと。これを自分の問題としてリアルに捉えられる子でなければ、合格することはありえません。

これまた私の個人的意見ですが、仮にそういうレベルに達することが難しい場合は、学力的に無理のない高校を目指す方が、結果的には、よりよい大学進学への道が開けてくる気がします(指定校推薦で有名私大に合格するなど)。

この記事が、最適な高校を選択する一助になれば幸いです。