映画『ロビン・フッド』ケイト・ブランシェット&人権思想から

映画『ロビン・フッド』を見てきました。私も副代表も主演のラッセル・クロウが苦手なので、あんまり期待していなかったんですが、どうしてどうして最高の作品でした。

ちょっとネタバレもありますので、これからご覧になる予定の方はお気をつけを。

時は12世紀後半、主人公のロビン・ロングストライド(通称ロビン・フッド)が、獅子心王(リチャード1世)率いる十字軍の一員として闘っているところから映画は始まります。エルサレムからイングランドへの帰還の途上、フランス北部の城を攻め落としている場面です。

十字軍の意義を、獅子心王がわざわざ一兵卒たるロビン・フッドに尋ねるシーンがあるんですが、ここで彼はかなり否定的な意見を王に述べます。ここらへんはやはりハリウッド映画ですね。イスラム圏の観客への気づかい(商売気?)を少し感じます。

さて、獅子心王はこの闘いの途中で落命。兵士達はイングランドへ命からがら逃げ帰るわけですが、獅子心王亡き後のイングランド王権はジョン王に移行。このジョン王がとても愚昧な王で、北部諸侯との関係がギクシャク、内戦寸前の状態に陥る。で、この機に乗じてフランス軍がイングランドに大攻勢を掛ける。我らがロビン・フッドが立ち上がる時が来た……。

というのが大まかなストーリーなんですが、丁寧に物語が綴られてゆきますし、世界史を知らなくても全然問題ありません。

私が見ていて面白かったところをいくつかご紹介。

個人的にケイト・ブランシェット(Cate Blanchett)のファンなんですが、本当に名女優だと思います。この作品の主役はケイト・ブランシェットです(断言)。ケイトもラッセル・クロウもアカデミー賞を獲得している役者ですので、演技を安心してみていられる人達ですが、ケイトが出演しているシーンは彼女ばっかり見ていました(笑)。

領主代理としての毅然とした強さ、女性らしい恥じらい、そうした心の内面の動きを余すところなく演技で表現できる女優たるケイトあってこその映画だと思うのです(褒めすぎ?)。

映画を見ていると、ロビン・フッドと彼女の心が通い合ってゆくのが、とても自然に思えるんですが、これも彼女の演技力があってこそ。彼女がロビンの言う「knight」という言葉を「night」と取り違えて、顔を赤らめるシーンなんかは(少し大人向きなので意味は詳しく述べません)、領主代理として働く厳しい顔が、ふっと一人の女性の顔に戻り、本当に秀逸でした。40歳を越えた女性に可愛いというのは失礼かもしれませんが、とても可愛いのです。乗馬シーンもとても凛々しく格好良いんだよなぁ。

ロビン・フッドの亡き父の話も出てくるんですが、これがかなり面白い設定です。ロビン・フッドは「歴史上」ではなく「伝説上」の人物ですから、色々な設定が盛り込めます。

ロビン・フッドの父は、なんと人権思想・啓蒙思想を説いた石工という設定なんです。もちろん、この当時(暗黒の中世だ)にそんな思想が受け入れられるはずもなく、危険思想の持ち主として処刑されてしまいます。

その時に彼が標語とした言葉が映画中に何度も出てきます。

 Rise and rise again until lambs become lions.
(幾度でも立ち上がれ、子羊が獅子となるまで。)

「収奪されるだけの子羊であることをやめよ、権力にひざまずかぬ誇り高き獅子となるため、闘うのだ!」という趣旨だと私は解釈しました。lambs, lions という風に複数形になっているのがいいですね。民衆に向かって叫んでいる感じが出ています。

映画中には、この言葉を胸に刻むロビン・フッドが、ジョン王に人権思想を説くシーンもあります。予告編の中で「Liberty by law! (法の下の自由を!)」と叫んでいるシーンがそれです。後のマグナ・カルタの淵源と言えるかもしれません。

監督はリドリー・スコット。『エイリアン』『ブレード・ランナー』『ブラック・レイン』『グラディエーター』『ハンニバル』などの監督さんです。

今年は忙しくてあまり映画館に足を運べなかったんですが、やっぱり映画はいいですね。来年はできるだけ映画館で映画を見よう。

『ロビン・フッド』予告編ver.1

『ロビン・フッド』予告編ver.2