明鏡国語辞典第二版 国語辞典あれこれ

先日大型書店に行った際、辞書コーナーに行ってみると、『明鏡国語辞典』の第2版が出ていました。

明鏡国語辞典 第二版

明鏡国語辞典 第二版

仕事柄、国語辞典は毎日のように使う「道具」なんですが、ここ数年、書籍版を買っていません。仕事道具として使う場合、電子版(MacやiPhoneの上で使うデータ)の方が圧倒的に便利なんです。検索も圧倒的に早いですし、印刷もできますしね。

そんなわけで、今回、書籍版『明鏡国語辞典第二版』は購入せず、電子データ化を待つことにしました。

初版の方は電子データも書籍版も両方もっているお気に入りの辞書。私がいちばん良く使う小型国語辞典の一つです。どなたにもお薦めできる良質な国語辞典だと思います。

国語辞典なんてどれも同じだとお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、とんでもない。男性にふられた女性が「男なんてみんな同じよ!」とバーで泣き叫ぶシーンをよく見ますが(見ない見ない)、それと同じぐらい暴論です。

大型国語辞典(『日本国語大辞典』しかありません)、中型国語辞典(『広辞苑』『大辞林』など)、小型国語辞典(3000円前後で販売されているもの)で大きく違うのは当然ですが、小型国語辞典はとりわけバリエーションに富んでいます。

個人的には、大きく分けて「あっさり系」と「こってり系」に分けて考えています(ラーメン?)。

要するに、語釈があっさりしていてあまり踏み込まない感じにしてある国語辞典と、かなり踏み込んだ語釈を示す国語辞典に分けて考えているわけです。

「あっさり系」の例としては、『岩波国語辞典』や『三省堂国語辞典』が挙げられます。淡々と語の説明を示してくれる辞書です。それはそれで意義があることなんですが、私のような辞書マニアにはちょっと物足りない。あまり手が伸びない辞書ということになります。

「こってり系」の例として挙げられるのが、上述の『明鏡国語辞典』や『三省堂新明解国語辞典』です。明鏡の場合、基本的な語をかなり掘り下げて説明してくれますので、授業の下準備をする際にとても便利です。自分が分かるということと、生徒に分かってもらうということは全く別論なので、こうした基本語の説明に手厚い辞書は指導者としてもありがたい存在なのです。

『三省堂新明解国語辞典』に至っては、踏み込んだ解釈を通り越して、「勇み足」と評されることがあるぐらいでして、特に古い版は辞書マニア内でブームを呼んだぐらいです。「新解さん」という愛称すらあるんですよ(笑)。今は随分大人しくなった印象を受けますけれど。

例えばこんな感じ。『三省堂大辞林』と比較してみましょう。

三省堂大辞林 第三版
どうぶつえん【動物園】
動物を収集・飼育し、教育・娯楽などのために一般に公開する施設。

三省堂新明解国語辞典 第四版
どうぶつえん【動物園】
生態を公衆に見せ、かたわら保護を加えるためと称し、捕らえて来た多くの鳥獣・魚虫などに対し、狭い空間での生活を余儀なくし、飼い殺しにする、人間中心の施設。

(手元に三省堂新明解国語辞典第四版がないので、下記のサイトから引用させて頂きました。)
新明解国語辞典の魅力 万省堂

「飼い殺しにする、人間中心の施設」って、グリーンピースの人みたいな……(笑)。確かにそうかもしれないんですが、ここまでいくと、「語釈」じゃなくて「主観的な感想」です。でもそれがまた楽しい辞書なんですけどね。

『明鏡国語辞典』に話を戻しましょう。

広くお薦めできる国語辞典です。高校での採択も増えてくるのではないでしょうか。高校生以上の大人を対象としていると思われますが、意欲的な中学生にもお薦めです。中途半端な学習辞書を使うぐらいなら、大人向きの辞書を使う方がよいと思うのです。

個人的な好みを言えば、大修館書店の辞書の字体・字組みはどうも……。同社のジーニアス英和辞典もそうなんですが、何となく読みにくい気がするのは私だけでしょうか。まぁ、内容には何の関係もありませんけれど。

そうそう、間違って初版を買わないようにして下さいね。辞書は原則として、新しいものほど良いものになっていますから。今回は4000語の大幅増補がなされているそうです。

(公式サイト) 渾身の大改訂! 明鏡国語辞典第二版
http://www.taishukan.co.jp/meikyo/meikyo2_can_top.html


学習者が「書籍辞書」と「電子辞書」とをどう使い分けるべきか、という話についてはいずれ書こうと思っています。結論だけ述べておくと、両者を有効活用すべしということになります。詳しくは別の機会に。