今年、小学低学年用に採用した国語のテキストは、なかなか面白い趣向が凝らしてありまして、本文に出てきた少し難しい語彙をもとに知識を広げてゆくというスタイルが取られています。
例えば、本文内に「交差点」という言葉が出ている場合、そこから派生して「四つ角」「三さ路」などの言葉がイラスト付きで取り上げられています。
生活に関係する語は、現物に見て触れて覚えるのがいちばん良いとは思いますが、授業中に「三叉路」を見学にゆくわけにもゆかず、こうした説明に付いているイラストは、授業をする側にとっても非常にありがたいものです。
まぁ、自分で黒板に絵を描いてもいいんですが、私はとてつもなく絵が下手です。生徒から、「先生、絵下手すぎ!」と笑われることも多く、ちょっとコンプレックスになっています(笑)。教えるためにどうしても必要な場合は、恥を忍んで描いていますけれど……。
閑話休題。テキストに載っている語彙の説明だけでは、せっかくの授業の意味がありませんから、色々と関連する語彙も紹介しています。「交差点」「四つ角」「三叉路」と来れば、「丁字路」を紹介しないわけにはゆきません!
私「(Tの字を黒板に書いて)こんな形の道を何て言うか知ってる?」
生徒「ティー道!」「ティー道路!」
私「まぁ、意味は通じそうだけどねー。本当は『丁字路(ていじろ)』と言います。今でこそ誰もがアルファベットを知っているから『T』に似ていると思うけど、昔は漢字の『丁(てい)』に似ていると考えて、そういう言葉になったんだよ。」
ちょっとウンチクになりますが、「丁字路(ていじろ)」が元からあった正式な言葉で、「T字路(てぃーじろ)」は後から発生した言葉です。
思うに、「丁(てい)」という漢字と「T」というアルファベットが字形も発音も似ていたため、「T字路(てぃーじろ)」と呼ばれるようになってきたのでしょう。
持っている辞書のいくつかで裏を取ってみると、大辞林・大辞泉・学研国語大辞典・明鏡国語辞典・新明解国語辞典は、「ていじろ」のみを見出し語としており、広辞苑は「ていじろ」「てぃーじろ」の両方を見出し語としています。
ちなみに、研究社の和英大辞典は、「ていじろ」「てぃーじろ」の両方を見出し語とし、a T-junction, a T-intersection という訳語を与えています。
「T字路(てぃーじろ)」が間違いとまでは言えないと思いますが、「丁字路(ていじろ)」の方が、ちょっと教養の香りがしますね。
偉そうに講釈を垂れている私も、実は二十歳頃まで「T字路(てぃーじろ)」とばかり思っていたことを白状しておきます(笑)。