字幕付き映画と国語力

英語圏のメジャーな映画だと、字幕版と日本語吹き替え版が用意されています。あなたならどちらを選択されますか?

私は絶対に字幕版を選択します。

・俳優の肉声(演技の重要な一部分ですよね)が聞ける。
・英語の台詞を聞きながら、日本語の情報も目に入る。

更に、耳の不自由な人にも便利ですよね。映画の字幕って、日本の優れた文化の一つだと思います。

音声と字幕を比べてみるとよく分かりますが、字幕ではかなりの情報が削除されています。音声が10とすると、字幕が5~7ぐらいのことも多い。しかし、セリフの巧みな取捨選択・翻訳の妙で、映画のキモは伝わるわけです。

戸田奈津子さんに代表される字幕作成者(翻訳者とはちょっとニュアンスが違うのでこの語を使います)が、英語力だけではなく、かなりの国語力を有しておられるのは間違いありません。
彼女自身「英語力なんてあって当たり前、日本語の力がない人間はこの世界に向かない。むしろ国語力の方が重要。」という趣旨の話をしておられます。
(もちろん、数ある映画の中には???となるような字幕もありますが、そこは愛嬌。)

しかし、最近異変が起きているようです。
若者を中心に、字幕離れが起きているらしい。

何でも、限られた時間で、文章を読み切ることが出来ない人が増えてきており、字幕版が敬遠されがちになっている。配給会社としても、字幕の情報量や漢字を少なくするなどして対処しているが、それでも吹き替え版の方が人気が高くなりつつある、という話。

詳しくはこちらに産経ニュースの記事があります。
「映画字幕で業界が四苦八苦 若者の知的レベル低下が背景か?」

こんなことが続けば、子供向きの映画だけではなく、大人向きの映画でも字幕版が絶滅するかもしれません。字幕付きの映画が楽しめないレベルの国語力、これはかなりマズいと思います。

小さい頃から読書・映画鑑賞に親しませる、それぐらいしか解決策はないでしょう。逆に言えば、国語力を付けるには、幼い頃からの地道な積み重ねが重要です。といっても、楽しい「積み重ね」ですから、結構楽な気がするんですが……。いかがでしょうか。