読解力=人の話を聴く力

「人の話を聴く力」と「読解力」

いきなり結論から申し上げますと、「人の話を聴く力」と「読解力」は完全にリンクしています。

何度か記事にしてきましたが、読解というのはつまるところ、「筆者がその文章で何を言おうとしているかを読み取る」ということです。

自分の意見や考えはひとまず横に置いて、文章に寄り添う。もちろん、語彙力や漢字力・文法的な知識は前提として必要ですが、結局は、筆者が文章によって何を言いたいのかを「落ち着いて・腰を据えて・じっくりと・文章に寄り添って・自分勝手な考えを持たず」考えることが何より大切。指導経験を重ねれば重ねるほど、そういう思いが深まります。

読解力が身に付いてくれば、記号選択問題などは簡単です。本文をしっかり読み解いた上で、選択肢をチェックすればいいだけですからね(これも読解の一つですが)。

国語のよくできる生徒に、この選択肢はなぜダメだと思う?と尋ねると、「だって、こんなこと文章のどこにも書いてないから」という答えがよく返ってきます。そうなんですよね、文章をちゃんと読めていれば、「そんなこと一言も書いていない」で瞬間的に却下です。こういう風になれば、怪しい選択肢(大抵は二つにしぼられる)をじっくりと検討することに貴重な時間を使うことができます。

記述問題は、記号選択問題よりややハードルは上がるかもしれませんが、やっぱり読解力が基礎になるのは間違いありません。文章を書くというのは、「大人はこんな風に文章を書いて、人に分からせようとするんだな。自分もこんな風に書けばいいんだな。」というように、真似をするところからスタートするわけですから。文章のオリジナリティなんて、入試では全く求められていません。

ちなみに、文章のオリジナリティなんて、一杯書いているうちに自然とにじみ出てくるものだと思います。求めて得られるものでも無いでしょう。

私の指導経験から

少し話が逸れてしまいましたが、読解力が「文章によって筆者が何を言いたいのかを腰を据えて考える力」であるとすれば、「人の話をじっくり聴く力」と「読解力」がまったく同質的なものである、ということはご理解いただけるかと存じます。

これは私の経験上からも言えることでして、授業をちゃんと聴いてくれる生徒さんは、絶対に成績が伸びるんですよね。私の授業が上手い、と言いたいわけではありません。人の話をちゃんと聴ける人は、どんな塾でもどんな授業でも間違いなく成績を伸ばすことができますよ、と言いたい訳です。

人の話をよく聴く人は、雑談をしていてもよく話が通りますし、挨拶もしっかりしていることが多いですね。コミュ力が高いというのとはちょっと違います。人の話に対する敬意のようなものというか、上下を問わず他人の存在そのものに対する敬意があるんですよね。

逆に、人の話を聴いてくれない生徒さんは、正直に申し上げると、成績の伸び率が低くなりがちです。そりゃそうですよね、授業内容を100%持って帰る人と、20%しか持ち帰れない人では、どんどん差が開きます。

自分の非力を白状するようで恥ずかしいんですが、話を聴いてくれない・聴く気のない人に、話を聴かせることはかなり難しい作業です。いくら興味深く思えるように授業を構成しても、何度も何度も注意を促しても、適宜休息を入れても、やっぱり話の内容は伝わりにくい。

まあ、分からなくもないんです。私は野球に全く興味がありませんが、延々と野球のプレースタイルやルールに関して話をされても、確かに聴く気にはなりにくいですからね(笑)。ただ、やっぱり、その人が一生懸命何かを伝えようとしているなら、敬意を持ってその人の話を聴こうとはします。

結局は幼い頃からのトレーニング

じゃあ、人の話を聴く力はどうしたら身に付くのかと言われそうですね。正直に申し上げると、即効性のある手段は特にありません。幼い頃から、「人の話をよく聴きなさい」と教え込むしかないだろうと思います。つまり「しつけ」の範疇ではないかと考えています。

私自身、ボンヤリしていると、親から「人の話を聴いているのか!」と厳しく叱られましたし、自分の息子にも「人の話はちゃんと聴け!」と何度も叱りつけてきました。

だって、そうしないと子どもが可哀想ですよね。人の話が役立つものなら聴かないと損ですし、ケンカをしているときですら、相手の話をよく聴いて攻撃すべき点を探しておかねばならないわけですから。それに、人間というのは、自分の話を聴いてくれる人が大好きな生き物です。他人の話をよく聴けば、自然に覚えがめでたくなります。これ、社会の中で生きていく上で、とても大切なことだと思うんですよね。

「聡」の意味するところ

「聡」という漢字があります。聡明・聡智・聡敏などという熟語から分かるように、「かしこい」という意味の漢字です。漢和辞典(漢辞海)から引用してみましょう。

<形容詞>
1.聴力が優れるさま。
2.はっきり聞こえるさま。
3.かしこい。

<名詞>
1.聴力。
2.かしこい人。

もうお分かり頂けるかと思います。昔の人は、「よく聞こえる・よく聴いている」=「かしこい」と理解していたんですよね。そもそも、この「かしこさ」を表す漢字が「耳偏」だということも、「よく聴く」=「かしこい」ということを如実に表していると思います。

結論

「聴く力」は「読解力」なり。
幼い頃から人の話を聴く習慣を身に付けよう。

幼いお子さんの読解力向上の一助となれば幸いです。

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