小川洋子と川上弘美と

小川洋子と川上弘美。彼女たちの作品を、中学入試のレベルでもときどき見ることがあります。必ずしも、小学生に出題するのに適している作品だとは思わないんですが、少し背伸びして不思議な世界を味わうという、読書本来の楽しみからすれば、面白い作品かもしれません。

ちなみに、「中学入試によく出る作家だから、ウチの子にどれか読ませようかしら」などと考えて、お二人の文庫本を小学生の子どもに買い与えることはお勧めしません。大人向きの世界が繰り広げられていますので。中学入試の問題は、そういう世界をうまくパスして作られています(笑)。

さて、前にも書きましたが、小川洋子と川上弘美の共通性は、「静謐な世界、でも一筋縄ではいかない世界」を描いているという点にあると思います。芥川賞作家であり現役の芥川賞選考委員である、といった文壇的な共通点もありますが……。

私も副代表も読書が趣味ですので、よく作家論を戦わせるんですが、この二氏がよく似た傾向をお持ちであることは、二人とも認めるところです。

じゃあ、どこが違うんだろうか。簡単に片付けられない何か重要な差異がある。しかし、それを表現する手立てが見付からない……。私も副代表も、そう考えていたのでした。

が、つい最近、答を見つけました。先にご紹介した、小川洋子『心と響き合う読書案内』です。川上弘美『蛇を踏む』を紹介する中で、何と小川氏ご本人が説明して下さっているではありませんか!

少し長いですが、引用します。

(ブログ筆者注:『文學界』誌上でお二人が対談された話を受けて)
川上さんが小説のモチーフにするものは、蛇だとか、蛸、モグラ、果物のビワといった、柔らかい感触のものです。一方私の場合は、数字や、標本や、博物館など輪郭がかっちりしたものです。
川上さんは、ものの風景の輪郭をなくして、どんどん膨張させていくようなやり方で小説をお書きになっています。私は、最初から輪郭をはっきり決めて、その中にぐうっと集約させてゆく方向に向かいます。このようにベクトルが違うということをこの対談で発見して二人ともうれしくなったのです。
(上記『心と響き合う読書案内』より引用)

さすがのお二方、これは究極的な説明であると思います。私も、川上弘美の小説には、小川洋子の小説に感じない「ぬめり」「子宮的」とでもいうべきものを感じていましたが、ここまで的確に表現できませんでした。

文学に生きる者同士の会話は何とも鋭いものです。

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