塾を運営していると、色々な塾専用教材を見たり使ったりする機会があります。よく考えられていて使いやすいものもあれば、全然生徒の立場に立っていないものもあり、玉石混交状態です。
最近、指導書と呼ばれるテキストにも少し変化が生じてきたような気がします。指導書とは、教える側用のテキストでして、解答などが前もって印刷されているものです。授業準備の際にいちいち解答などを書き写さなくて良いので、教える側にとってはとても便利なものなんですね。
私が好きなタイプの指導書は、「解答」だけが書いてある素っ気ないものです。「解法」が詳しく記入されているタイプは困りもの。「ごちゃごちゃ解法なんか書いてくれるなよ、それはこっちで考えて教える部分だし、私が書き込む場所がなくなるじゃないか」という感じです。
しかるに、懇切丁寧に解法が書いてあったりするのが最近の傾向。厳しいかもしれませんが、こんなのを見ないといけない人が教えるべきではないだろうと思ってしまいます。市販の教材を使って保護者さんが教えるというケースならいざ知らず、仮にも「塾専用」のテキストなんですから。
思うに、この傾向、個別指導スタイルの流行と軌を一にしているんじゃないでしょうか。正直に書きますが、個別指導の一番の問題点は「講師の質」。講師の質が保証されるならば、個別指導は悪くない指導方針なんですが、そんなにたくさん上質な講師がいるはずもなく、クオリティの低い講師がかなり多いのは否めないでしょう。教える力があるならば、より待遇の良い集団指導の講師になるはずですし。(もちろん素晴らしい個別指導講師の方々もおいでだと思います。あくまでも一般論として乞御理解。)
解法を読み読み教えないとならないレベルの講師を、低廉な賃金で雇わざるをえないという業界の構造的な問題が、指導書の変化として現れてきた。そう理解しても間違いではない気がします。
このあいだ見た指導書の記載には、思わず苦笑しました。
「この問題ができたら、生徒をほめてあげましょう」
そんなのこっちで決めますから(笑)。ちなみに高校受験用のテキストです。