全国学力テスト(2009年) 小学校算数B 最低正答率の問題

8月27日、本年度の全国学力テストの結果が発表されました。

今年も大阪府の成績が云々されていますが、昨年同様、どうでもよいことだと思います。大阪府全体としての成績がよくなったところで、一人一人の塾生の学力向上とは全く関係がありませんし。仄聞するに、小学生は向上し、中学生は昨年同様最下位レベルとのこと。

正直に言えば、中学生の学力テスト平均値を上げたい(飾りたい)のであれば、参加していない私立中学に、府の関係者が三拝九拝して参加してもらう方が早いと思います。

私立中学からすると、一日をつぶす意義がないので、参加していないところが多数あるわけですが、テスト内容(進学校の生徒からすると100点で当然という内容)から考えて、仕方がない気がします。私が私立中学の校長なら絶対に参加しません(笑)。

とは言っても、せっかくの全国テスト。今年も気になった問題をピックアップしてみましょう。

挙げるのは、小学校6年生の受験した「算数B」(算数Aが基礎的、算数Bが応用的とお考え下さい)のなかで、最も正答率の低かった問題です。正答率17.9%。

まずは問題をご覧下さい、と言いたいところですが、国立教育政策研究所教育課程研究センター研究開発部学力調査課のウェブサイトを見ると、無断転載禁止とのこと。国民の税金から賄われている問題なんですが……。

まぁ、仕方がないので、下記ファイルをご参照ください。
図を見て頂いた方がよりよくお分かりになるかと存じます。
(PDFファイルになっています。)

平成21年度全国学力調査 小学校算数B
http://www.nier.go.jp/09chousa/09mondai_shou_sansuu_b.pdf

この19ページ(小算B-17)に掲載されている問題5です。

まず、「リサイクル活動で集めたものの月ごとの重さ 」が棒グラフで示されています。具体的には下記数値のグラフです。

4月:リサイクルゴミの重さ80kg
  そのうちペットボトルの重さ20kg

5月:リサイクルゴミの重さ90kg
  そのうちペットボトルの重さ20kg

6月:リサイクルゴミの重さ100kg
  そのうちペットボトルの重さ20kg

この棒グラフに付随して、小問3で次のような問題が出題されています。

4月の全体の重さをもとにしたペットボトルの重さの割合と、6月の全体の重さをもとにしたペットボトルの重さの割合を比べると、どのようなことが言えますか。
下の1から3までの中から正しいものを1つ選んで、その番号を書きましょう。また、その番号を選んだわけを、言葉や式を使って書きましょう。

1.ペットボトルの重さの割合は、4月のほうが大きい。

2.ペットボトルの重さの割合は、4月と6月で同じ。

3.ペットボトルの重さの割合は、6月のほうが大きい。

どうでしょうか。普通の大人なら直感的に正解に至るレベルの問題だと思います(ですよね?)。もちろん正答は「1」です。しかし、小学生にとって「割合」の単元はまさに鬼門。十全に理解できている小学生は、非常に少ないと思います。学校全体レベル(塾などで真剣に勉強している子供もいれば、学校の授業すら聞いていない子供もいる)で考えたとき、正答率が20パーセントを割り込むというのは、塾で教える私たちの実感に合致しています。

ここで、正答を選ぶ思考回路を分析してみましょう。好ましい解き方としては、1>2>3の順となります。

1.直感で瞬間的に分かる。「割合」という言葉の意味を本質的に理解している。グラフを見た瞬間に「4月のペットボトルの重さ」が占める割合がもっとも大きいと理解できる。計算するまでもない問題であり、ほとんど国語の問題である。

2.「割合=くらべる量÷もとにする量」という式を思い出し、実際に立式してみる。割られる数が同じ場合(ここではどの式も20kg)、割る数が大きいほど商が小さくなることに気づき、実際に計算することなく、正答を得る。

3.「割合=くらべる量÷もとにする量」という式を思い出し、実際に立式してみる。2のような数理的直感が働かないため、実際に計算してみる。それぞれ 0.25 / 0.22 / 0.2 という答を出した上で比較して、正答を得る。

(正解選択肢を選んだ後の説明部分については省略。)

とりあえず、こうして正答にたどり着ける小学6年生は、全国的に見て約18%というわけです。残り80%強の小学6年生はいずれの思考手順も取れない、または取ったが計算ミスや記入ミスを犯している、ということになります。

個人的な意見ですが、6年生の4月の時点で、この問題(5年生配当の内容です)を解けない場合は、私立中学上位校・中堅校の受験は厳しいであろうと思います。下位中学を受験するか、中学受験を諦めるか、いずれかを選択すべきことになるでしょう。

公立中学に進学される場合も、不正解でよいと言うわけではありません。「一次方程式」の単元で、割合はジャンジャン出てきます。放置しておくと間違いなく数学でコケますので、問題集などを利用して、早めに穴を埋めておかれることをお薦めします。

今年もちょっと辛口になってしまいました……。

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