国語豆知識「小春日和」

5月も中旬だというのに、妙に寒い日があったりしますよね。つい最近もそんな一日があったんですが、私は寒いのが大の苦手なので(そして夏が大好きなので)、妙にイライラしてしまいます。もう夏に向かってんのに誰の許可もろて気温下げてんねん!とブツブツつぶやいてしまいます。危ないおじさんだと思われると困るので、家の中だけですけど……。

こういう鬱陶しい日のことを私は勝手に「小冬日和(こふゆびより)」と名付けています。

宮田塾国語辞典によると、以下のように書かれています。

こふゆ-びより【小冬日和】
[名詞] 初夏のころの、寒くて冬のような感じがするひより。

もちろんこんな語はございませんので、真に受けないでいただきたいんですが、元になる言葉「小春日和(こはるびより)」は、中学受験生も含めて知っておいて欲しい言葉です。

ちゃんとした国語辞典によると、「小春日和」は次のように定義されています。

十一月から十二月にかけての、よくはれた春のような感じがする、あたたかいひより。
(三省堂国語辞典第八版)

陰暦十月のころの(ような)よく晴れた暖かい日和。
(三省堂新明解国語辞典第八版)

初冬のころの、暖かくて穏やかな天気。
(大修館書店明鏡国語辞典第三版)

ご存知の方も多いとは思いますが、この語のポイントは「初冬の」暖かい日を指すということです。ですから、春先のちょっと暖かくなり始めた日に、大の大人が「今日は小春日和だな〜」なんて言ってしまうと、心の中で「プッ!」と笑われること必至です。

「小春日和」は「冬」の季語としても有名でして、中学入試でも頻出語だといってよいと思います。「大辞林」には「玉の如き小春日和を授かりし」という松本たかしの句が掲出されておりますが、佳句だと思います。冬の厳しさが増し始めた時期、ちょっと暖かい日があると嬉しいですよね。

で、驚きなんですが、「大辞泉」にはこんなデータが載せられています。

補説
文化庁が発表した平成26年度「国語に関する世論調査」では、本来の意味とされる「初冬の頃の、穏やかで暖かな天気」で使う人が51.7パーセント、本来の意味ではない「春先の頃の、穏やかで暖かな天気」で使う人が41.7パーセントという結果が出ている。

う〜ん、もう数年もすれば、初冬の暖かい日に「今日は小春日和ですね」なんて言うと、「まだ冬なのに小春だなんて常識の無い人だなあ、ププッ」って思われそうですね。

まだしばらくのところは(特に受験生は)、本来の意味の方、「小春日和=初冬の暖かくて穏やかな天気」で覚えておいて欲しいと思います。