我が家の大学受験

気がつけば一月以上ブログを更新しておりませんでした。すみません。

この一ヵ月は、新規においでになる生徒さんの体験授業や面談、新しく開く授業の準備、新しい教材のチェック、そして確定申告と、毎日毎日仕事に追われておりました(ありがたいことです)。

それに加え、「息子の大学受験」という我が家にとって大きなプロジェクトも同時に進行しておりましたので、暇が、いや心理的余裕がほとんど無かったという次第です。


息子の大学入試の結果ですが、残念ながら昨年同様第一志望の国公立大学には縁がなく、4月から京都今出川の私立大学に、いや、そんな回りくどい言い方をしなくてもいいですね、同志社大学にお世話になることとなりました。

正直に言えば、某国公立大合格発表の日は私も妻も少々落胆しました。というのも、この浪人期間中、勉強は順調に進み、共通テスト型模試であれ、二次型模試であれ、受けた模試の判定はすべて「A」。合格確実とは言わないまでも、かなり合格可能性は高く、今年はそちらに入学するであろうと、予算や生活計画を立てておりましたので……。

浪人中お世話になっていた塾の方でも、今年はまず間違いないだろうとおっしゃって下さっていて、本人もあまり精神的な負担を感じず、心おだやかに過ごしていたように思います。

しかし、好事魔多し。模試と本番は別物。

共通テストはほぼ思った通りの点数が取れ、河合塾などの判定を見ても、志望学科出願予定者の中で上位一桁。あとは体調不良だけに気をつけてこの調子で行くよう伝えて、さっさと大学への出願を行わせたところ、なぜか出願した学部の倍率が異常なほど高くなってゆきました。最終的には昨年度比3倍の超高倍率に。


忙しさもあり、原則として浪人期間中の勉強は本人と塾に任せており、私が口出しすることはありませんでしたが、事ここに至ってはそうも言っておれません。「国語に関しては俺に任せて大船に乗った気でいろ、それ以外の科目についてはお前が全力で頑張れ」と申し伝えて、二次試験までは国語の勉強を手伝いました。

高校生・浪人生指導のご希望を断っているのに、自分の息子だったら手伝うのかとご不興を買いそうですが、高校生・浪人生指導をお断りしている理由の大部分は時間的問題です。小学生・中学受験生を指導して、煩瑣な経営雑務もこなしてとなると、どうしてもまともな時間に指導の機会を設けることが難しい。

そんなわけで、息子の指導は深夜に行っていました。午前1時や2時に授業開始という感じです。深夜に時間が取れないときは、私の食事時間を使って指導することも度々。「トクヴィルの政治思想は、モグモグ、この文脈においては、モグモグ、当時の合衆国に関する政治状況理解として、モグモグ」「民藝運動は結局、モグモグ、柳宗悦の意識的な、モグモグ」みたいな。聞きにくくてしょうがなかったと思います(笑)。

そんな日々の中、併願していた同志社大学を複数学部受験したわけですが、先述のような事情もあって、ほとんど対策してこなかったことが判明。現役じゃあるまいし、浪人してるねんから併願校対策もやっとけよ!とブーブー文句を垂れながら、こちらの方もあれこれお世話。我が息子、本当にまだまだ子供だと思います。過去問題集を手配して慌てて対策です。

国語に至ってはなかなか時間が取れず、私が試験会場(あえて京都ではなく神戸を選択しました)まで車で送ることとし、運転しながらミニ授業をしておりました。もちろん問題や答案を見ながら運転するのは危険かつ違法ですから、頭の中に問題の概要や傾向(国公立大学の問題とはかなり趣向が異なります)を入れておいて、それをもとに助手席の息子にアドバイス&授業です。バイク乗りの私からすると、自動車の運転はかなり余裕があるので全然OK。

こんなことをしてもらってる受験生なんていないんだから、自信を持って受けてこいと試験会場に送ること5回。その効あったか、受けた学部全勝とは言わないものの、共通テスト利用受験を含め、6学部に合格をいただきました。同志社大学はどこか一つ偏差値が低めの学部にでもひっかかってくれれば有り難いという感じでしたので、本人も私どもも望外の喜び。意外や意外、どの学部の得点も合格最低点をかなり上回っており、この一年の息子の成長を感じました。

この調子なら、2月末の国公立入試も十分勝機はあるよ、確かに倍率は凄いことになってるけど、共通テストの持ち点も悪くないし、私立大学も実力を発揮できたんだから。不安になる息子をそんな風に励ましながら、2月後半は過ぎてゆきました。そして本番。

結果は先述の通り不合格でしたが、息子は飄々としておりまして、むしろ私達の方が落胆の度は大きかったように思います。一年間頑張ってきたのに……。しかも無謀な出願ではなく実力相当の出願だったのに……。

「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という某野球監督の言葉通り、不合格の場合には必ず原因があります。それはどの受験生を見ていても感じることなんですが、息子の場合はやはり「詰めの甘さ」でしょうか。

ただ、息子の立場からすると、同志社の方は「本当にやってみたい学問ができる学部」、国公立の方は偏差値的な観点から選択した「それほど興味のない学問をする学部」。今回の結果、本人としては負け惜しみではなく十分に満足していると申しておりまして、それが嘘偽りのない本心であることは、さすがに息子の親を19年もしていれば分かります。


私もこの仕事をしていて、第一志望校に不合格だった生徒さん・保護者様を沢山見てきました。そして、そうした人達にはよく「塞翁が馬」の話をしてきました。

塞翁(さいおう)が馬

その人にとって何がしあわせになり、何が不幸になるか、予測しがたいものだという意を表わす。
〔「塞翁」は、昔、中国で、国境のとりで近くに住んでいた老人の意。塞翁の馬が居なくなったかと思うと、しばらくして駿馬を連れ帰った。その馬に乗ったむすこはけがをしたが、それで戦争に行かずに済んだ。人は、そのたびごとになげいたり喜んだりしたが、塞翁は、「福必ずしも福ならず、禍必ずしも禍ならず」と答えたという故事に基づく〕

新明解国語辞典第八版より引用

望み通りにならなかった人にこの話をする時、私は本当に心からそう信じてお伝えしています。ある程度の年数を生きてきて、これは決して嘘ではない人生の真理だと思っています。適当な慰めの言葉を言いやがってと、もし思われていたなら、それ私の不徳のいたすところ。

ですから、息子についても我が家についても、私は同じ思いを持っています。あれだけ「間違いなし」と言われた国公立大には届かず、あまり深く考えていなかった私立大学では思っていた以上の成績を挙げる。これはやっぱり息子と同志社の縁が深かった、そしてそれが彼の人生にとってプラスになるのであろうと。

(先日、お世話になった塾へ報告を兼ねてご挨拶に伺ったんですが、塾長先生とお話をしていて先生が息子の大学・学部の先輩に当たることが判明。これもやっぱり何かの縁かなと思います。厚かましくもあれこれと質問してしまいました(笑)。)

私達は自分の子に、こんな大学に行け、こんな仕事に就けと命ずる気持ちは全くありません。自分の好きに生きて欲しい。願うのはただ一つ、「自分の力で世の中を渡ってゆけるようになる」ということだけです。私達親世代はいずれこの世を去るわけですから。

そういう意味で、大学生活を今後の人生における大きな糧にしてもらえればと思います。

京都は学生時代を過ごすのに最適な街。自分にもまた京都、鴨川、御所、今出川との縁が戻ってくるなんて不思議な気持ちです。またしばしばあの辺りを訪れる機会が増えそう。

あとは学費。親としてはこれが大変気になります。こればっかりは国公立大学が羨ましい(笑)。まだまだ頑張っていかないとなりませんね。ということで、今年も腰を据えて仕事に取り組んでゆきたいと思います。