たまには漢字の知識でも。
当塾では、漢字の書き取りについては、受験生・非受験生にかかわらず、私たちの方で必ず目を通すようにしています。その理由は下記記事に書いた通り。
そういう感じで長年生徒の書く漢字を見ているとよく分かるんですが(18歳から教え始めたのでもう30年選手なのです)、漢字の間違い方にはパターンがあります。
その全てのパターンを書き尽くすことは出来ませんが、今日はその一つをご紹介します。
「勝」と「券」の混同についてです。
「勝」の右下部分は「力」です。つまり、上に画が突き出ないとなりません。
一方、「券」の下部分は「刀」です。つまり、上に画が突き出てはいけません。
小学生は、この二つをよく混同してしまうんですよね。
私たちが教える時はこう説明しています。
「『勝』つためには『力』を出すよね。だから『力』が部品として入っているよ。」
「入場『券』は入り口で半分を切り取ることが多いよね。切り取ることと『刀』とは関係があるよね。だから『刀』が部品として入っているよ。」
そんなわけで、この2つの漢字は同時に練習したほうがいいですね。
で、この説明、小学生的な覚え方ではあるんですが、漢字学的に荒唐無稽なのかというとそうでもないんです。
『漢辞海』によると、『勝』については、「『力』から構成され、『朕』が音。」と説明されています。つまり、力が重要な部品なんですよね。
『券』についても調べてみると、「『刀』から構成されている」ということと、「『券』は契約の証拠として分けて持つ書きつけで、その側面に刻みを付けて分けた」という旨が記されています。
ということで、上記の教え方、安心して使っていただいてよいかと思います。もういちど整理しましょう。
「力で勝つ! 刀で券を切る!」
何か自分でポーズを付けて踊っておけば、もう間違えませんね(笑)。
ここまで読んでくださった方には、折角なので、役立つ知識をもう少し伝授いたしましょう。
ちょっと紛らわしい字に、「劵」という字があります。
これは下の部分が「力」なんですよね。音読みは「ケン」、訓読みは「うむ(「疲れる」の意)」。「倦怠感」なんて言いますが、あの「倦」の古字なんです。「力」を出すから疲れるというわけですね。
あと、『漢字源』には面白い参考知識が紹介されていました。
似た字(勝・騰・謄)の覚え方 「力でかつ(勝)、馬でのぼる(騰)、ことばでうつす(謄)」
ああ、これはいいですね。小学生の指導には関係ありませんが、高校生の指導には使えそうです。