「精読」を試す問題「精読」の姿勢を育てる問題

関西ではお盆この方、毎日毎日雨が降り続いています。このまま秋雨前線が発達停滞なんて事態になったら最悪ですね。一体いつになったら快晴の日は戻ってくれるのか。夏はやっぱり夏らしくあって欲しい。

さて、いつもこのブログで書いている内容なんですが、国語の入試問題を解く時に、最も大切なのは問題文の「精読」です。「速読」じゃない。

私が大学生の時に中国法制史の先生から伺った話を時々思いだします。「だいたい分かっているというのは、だいたい分かっていないのと同じだ。」

本当にそうなんですよね。あいまいな理解で「分かった」と考えることは非常に危ういことです。本人は分かったつもりでいても、見る人が見れば「こいつ全然分かってないな」とバレてしまう。

しっかり理解するためには、何よりも「精読」です。国語力の養成に「速読」はまったく必要ありません。「速読」をすすめてくるのはバチモンと思ってもらって構いません。

もちろん、精読できていてスピードも速いというのが一番理想なんです。理想なんですが、それはなかなか達成が難しいですよね。これはトレーニングにかなりの時間がかかるでしょう。それならば先に達成すべきは「速読」ではありません。「精読」の方を重視するべきです。

入試は制限時間の中で解かねばなりませんから、問題文を精読するために無限の時間が使えるわけではありません。しかし、与えられた時間の範囲内で精読すれば大丈夫なように問題は作成されています。ちゃんとした中学校であれば、ちゃんとした先生方がいらっしゃるのであり、ちゃんと受験生のことを考えたちゃんとした問題が作成されるはずですから。

というか、精読せずに速読して解かねば時間の足りない問題なんて作ると、合格不合格をかなりの部分「運」が左右してしまうことになります。ちゃんとした学校であれば、わざわざ自校が低レベルな学校だと喧伝してしまうような問題を作りはしません。この点、模試はめちゃくちゃな問題がよく見られますが、まあそれはそれ。


「精読」の姿勢を育てる問題、もしくは、「精読」できているかを試す問題として、私の好きなタイプのものがあります。

それは、「問題文を読んでいる時点で文章のおかしさに気づかないと、後からでは絶対に解けないような問題」です。もう少し具体的に説明しますと、問題文のどこかが加工されており、それがゆえにその部分(一文や段落)が、問題文全体の趣旨と矛盾をきたすようになっているという問題です。

ちょっと分かりにくいかもしれません。例えば、環境問題の観点から「電気自動車に反対する」という立場に筆者が立っているとします。発電のコストやインフラ整備を考えると旧来の自動車を維持する方が環境負荷が低い、といった論拠によることになるでしょう。

そうした要旨を押さえたうえで文章を読み進めてゆくと、しれっと「電気自動車は結局環境負荷が『低い』」といった表現が折り込まれていても、「この筆者は一体何を言ってるんだ、『電気自動車はダメだ、環境負荷が高い』っていう話だったじゃん、ワケワカメ」と瞬時にひっかかることができます。というか、そうならないと精読できているとは言えません。

そうした読みが出来ている人にとっては、「本文中には、筆者の主張からして明らかに矛盾している一文がある。その一文を抜きだし、正しいと思われる一文に書き換えなさい。」なんて問題は朝飯前ですよね。だって、問題文を読んでいる段階(=まだ問題に着手する前の段階)で気づいているわけですから。間違えようがない。瞬殺正答。ちょろいちょろい(笑)。

しかし、あやふやに読んでいる人には、この種の問題は極めて難しく正答率の低い問題になります。「えっ?どこかにおかしな文章なんてあったっけ?」もう一度最初から読んでみても、焦る気持ちでさらに読みはあやふやになり、時間だけむだに使って結局誤答に至るのが関の山。

この種の問題、受験生から見ると「酷な問題」に見えるのかもしれませんが、それは勉強の方向性や問題に向かう姿勢が間違っているのだと考えてもらいたいと思います。

受験生が焦る気持ちは私もよく分かります。分かるんですが、あえてまとめとして書いておきます。

国語の勉強をする時は、できるだけ問題文に真剣に取り組んで「精読」しよう。一に精読二に精読。精読のトレーニングを重ねれば速度は後からついてくる。

うっとうしい天気の夏休みですが、受験生の健闘を祈っております。