昨日、夕刊を読んで知ったんですが、新潮社の雑誌『考える人』が休刊するとの由。私も雑誌を買うことがめっきり減ったんですが、この雑誌だけは毎号欠かさず購入して読んでいました。寂しい話です。
雑誌「考える人」(新潮社刊)は、4月4日発売の2017年春号(第60号)をもって休刊することとなりました。
2002年に創刊し、plain living & high thinking(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)を編集理念に掲げユニークな生活文化総合誌として発行してまいりましたが、雑誌市場が加速度的に縮小する中、季刊雑誌として維持することが困難となり、創刊から15年の実績をもって一定の役割を終えた、ということにより休刊が決まりました。
http://www.shinchosha.co.jp/news/article/374/ より引用
今調べてみると、2007年頃から時々購入、2009年からは欠かさず講読しているので、かれこれ10年近い付き合いの雑誌です。取り上げられるテーマも毎号興味深いものでしたし、そのテーマの掘り下げ方のセンスも私好みでした。
少し前にかなりの誌面リニューアルがあって、ページ数減(以前のボリュームは余程の本好きでないと手に取らないレベルだった)、ならびに大幅値下げを断行していましたので、曲がり角にさしかかっているのかな、とは思っていたんですが……。
個人的には、読み切りやすいボリューム・求めやすい価格になった今の方が、幅広い読者が得られるのではないかと楽観していたんですが、甘かったようです。
この雑誌、当ブログでも何度か取り上げていますが、個人的な興味に合致しているだけでなく、仕事にも大いに関係がありました。具体的には、「入試国語」に大いに関連がある記事が多かったんですよね。
<関連記事>
セレンディピティ・バイオミミクリー
灘中学入試国語の分析 (2011年度・平成23年度)
古典の多面性・須賀敦子・平家物語
灘中などの国語の問題文は、この雑誌の寄稿者の書いたものが本当に多い。国語の先生方に愛読者が多いのではないかと想像します。
先日、副代表がこの雑誌を読んで曰く「どの記事もそのまま入試問題に使えそうな文章やね。というか、入試出題文の宝庫っていう感じやね。」
まさにその通り。
例えば、最新号(2017年冬号)の特集は「ことばの危機、ことばの未来」。もう私にとっては、読まないでどうする、到着が待ち遠しくて仕方がない、という内容でした。
池澤夏樹「ことばは変わるからこそおもしろい」は、私が以前ブログに書いたのと同じ意見。そうだよね、言葉が変わらなかったら、それはその言葉が衰退し始めている証拠だと思う。
飯間浩明氏の記事は(この雑誌に限らず)いつも着眼点が面白いですし、ユヴァル・ノア・ハラリのインタビューは『サピエンス全史』を読まねば、という気持ちにさせてくれました。
言葉に関する特集以外のレギュラー記事も秀逸です。今回なら、養老孟司氏と京大の林学の教授、竹内典之先生の対談記事がすごく楽しかった、というか、役立ちました。日本全国の森ガイドにもなっていたので。
あと、毎号楽しみにしていたのが向井万起男氏(宇宙飛行士向井千秋氏の夫、医師)の「どんな本、こんな本」という書評記事。1年ぐらい前の同記事で、ヘンリー・マーシュ『脳外科医マーシュの告白』という本を知ったんですが、これが無類に面白かったんですよね。やっぱり医師は医師を知るんでしょうか。
あ、この本はまたブログでも紹介してみたいと思っています。医師になろうかと考える人は読んでみるといいんじゃないかな。私の場合、自分には医師は到底勤まらないということがはっきりと分かりました(笑)。
話が逸れてしまいましたが、『考える人』の休刊は寂しい限り。再刊は極めて難しいでしょうが、また会う日を期待したいと思います。