もう9月も末、すっかり秋ムードになってまいりました。
副代表が私に言います。「なんか秋に合う和歌ない?」
なにやら上品な感じのお菓子の包装紙があるので、それに和歌を書こうという趣向らしい。副代表はたまにそういう遊びをする人ですが、なんで包装紙なん(笑)。まあいいけど。
ん〜っと、「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる」いや、もうさやかに(=はっきりと)見えまくりですので、今の時期には合わないな。
「ちはやぶる神代もきかず竜田川からくれなゐに水くくるとは」う〜ん、この和歌にはまだちと早いよね、深紅に染まった木の葉が落ちる時期じゃないとね。あと、大阪の繁華の地に合う歌でもないし。やっぱり奈良の小川のそばで口ずさむ歌ですよ、これは。オフロードバイクでちょっと林道に入ったりして(ちょっと違うか)。
和歌じゃないけど、これはどう?ポール・ヴェルレーヌ。フランス象徴詩。
「秋の日の ヸオロンの ためいきの 身にしみて ひたぶるに うら悲し」
そんなの初めて聞いたって?そうなん?めっちゃ有名な詩だよ。秋風の音をヸオロン(ヴァイオリン)に喩えてて、ちょうど今の時期に合うと思うなあ。あ、「ヴィオロン」は旧字体で書いてよね。「ゐ」のカタカナ「ヰ」に濁点を付けるねん。そうでないと気分が出ないし(細かいやつ)。
「も一回言って、書くから」
「秋の日の」
「秋の日の」っと。
「ヸオロンの」
「ヸオロンの」難しい字やね。
「身にしみて」
「身にしみて」っと。
「ひたぶるに うら悲し」
「ひたぶるに うら悲し」よしっと。
こんな感じになりました。
おっと!伝えている時に「ためいきの」を落としてしまいました。
まあいっか(笑)。
秋の寂寥にえ耐えで、落涙止むる能はぬ仔熊は、私めにございます。
ʕ•ᴥ•ʔ クマッ!
全編を知りたい方のために、上田敏『海潮音』から引用しておきますね。今の版は「ヸオロン」ではなく「ヴィオロン」としているようで、ちょっと寂しいですが……。
落葉 ポオル・ヴェルレエヌ
秋の日の
ヴィオロンの
ためいきの
身にしみて
ひたぶるに
うら悲し。鐘のおとに
胸ふたぎ
色かへて
涙ぐむ
過ぎし日の
おもひでや。げにわれは
うらぶれて
こゝかしこ
さだめなく
とび散らふ
落葉かな。仏蘭西(フランス)の詩はユウゴオに絵画の色を帯び、ルコント・ドゥ・リイルに彫塑の形を具(そな)へ、ヴェルレエヌに至りて音楽の声を伝へ、而して又更に陰影の匂なつかしきを捉(とら)へむとす。
訳者青空文庫 上田敏訳 『海潮音』より引用
https://www.aozora.gr.jp/cards/000235/files/2259_34474.html