久々に午前中だけが時間ができたので、北摂をうろうろして来ました。先の連休中も、授業こそないものの仕事で忙しくしていたので、久々の外出です。たまにはいいよね、と自己弁護しながら(笑)。
足はいつものごとく250ccのオフローダーです。非力なバイクなんですが、それがまた逆に楽しいんですよね。路面の状況やギア選択を勘案しながら回転数を合わせ、エンジンパワーをひねり出していく。タコメーター(回転計)すらないバイクなので、そのあたりを聴覚や振動で感じて直感的に判断するんですけどね。いわゆる、Don’t think. Feel! ってやつです。
さて、豊能(とよの)のあたりをトコトコと走っていると、コスモスがチラホラ。ああ秋だなあ。この間も少しヴェルレーヌのことを書きましたが、上田敏が訳した「落葉」のことが脳裏をよぎります。
秋の日の
ヰ゛オロンの
ためいきの
身にしみて
ひたぶるに
うら悲し。
今でも覚えているのは、やっぱりいい詩と訳だからこそ。
秋の日の
オフローダーの
エンジンの
身にしみて
ひたぶるに
こころよし。
私のその日の気分。バイク乗り以外には風情ゼロですね(笑)。
さて、コスモス。道の向こう側に妙にコスモスが多い一角があります。よく見ると「コスモスの里」という看板が立ててありました。幹線道路から外れて細い道を辿ってゆくと、うわっ、すごい数のコスモスが咲き乱れています(後で調べてみると全国的に有名なコスモススポットらしい。ご興味のあるかたは下記をご覧下さい。)
とよのコスモスの里 | SIGHTS and FACILITIES SEARCH 観光施設検索 | OSAKA-INFO 大阪観光情報 ASIAN GATEWAY OSAKA
入場料が500円とのことで、入園はしませんでした(せこい)。だって、おっさんが一人でコスモス園を散策してるってちょっと寒くないですか?時々スキップしたりして。メルヘンにも程があるわ。
また家族を車で連れてきてやろうかなと思いつつ、バイクを止めて外から眺めます。コスモスは少し謙虚ではかなくて、清楚な美人を思わせる花。しばし見とれてしまいました。
と、園内で家族連れが写真を撮っています。生後数ヶ月と思しき赤ちゃんと、その子を大切そうに抱くお母さん。そしてお母さんのご両親と思しき60代のご夫婦。
美しいこのコスモス畑を背景に、赤子と母親の写真を撮っていらっしゃったわけですが、母子とコスモスが調和していて、本当に微笑ましい光景でした。祖母と思われる方がカメラを構える。祖父と思われる男性は、孫を笑顔にしようと、カメラの後ろで背伸びをしてみたり、手を振ってみたり……。
ふと、自分の幼い頃の写真を思い出しました。
私の場合、コスモス畑ではなく、五月人形の前なんですが、歩き始めて間も無い頃の私がニコニコしている姿が収められています。私が穏やかに微笑んでいるのは、カメラの向こうに父母や祖父祖母がいるからでしょう。祖父母の家で撮られた写真であることは間違いないので、祖父母が私のために人形を用意し、飾り付けてくれたのだろうと思います。
私がその写真を見て思うのは、父母や祖父母の私に対する温かいまなざしです。この年齢になってみると、写真には写っていないその部分にこそ、かけがえのない家族の大切な気持ちを読み取ることができます。祖父母も父も他界した今、彼らの愛情に報いる術はありません。
コスモス畑で抱かれているこの赤ちゃんも、いつか今日の写真を見て、祖父や祖母の愛情を感じとる日が来るかもしれない。写真には写っていないけれど、それ故にこそ、祖父や祖母の愛を雄弁に語る写真を大切に思う日が来るかもしれない。
そんなことを思いながら豊能を後にしました。コスモスよりもいいものを見せてもらった気がします。いつまでも家族仲良く暮らされますように。