接尾語のニュアンスに注意

まだまだ忙しい日々が続いています。早く春が来て欲しい。

たまには国語関連の記事でも書いてみましょうかね。

以前、家の修理を頼んだことがあったんですが、その会社の職人さんのプロフィールをウェブサイトで見てみると、こんな記載がありました。

「私は大工くずれで今は電気工事を専門にしています云々」

いやいや、「くずれ」はダメでしょう(笑)。

新明解国語辞典によると、「くずれ」という語には次のような定義が与えられています。

〔接尾語的に〕以前はりっぱな経歴だったが、今は堕落して、どうしようも無い者の意を表わす。
「ボクサーくずれ」
「特攻隊くずれ」

単純に「以前は大工をしていましたが」といった表現でいいと思うんですが、強いて接尾語を使いたいなら、「あがり」がいいんじゃないでしょうか。

「私は大工あがりで今は電気工事を専門にしています云々」

大辞林によると、「あがり」という語には次のような定義が与えられています。

前に、その職業・身分・状態だったことを表す。多く、好ましくないという気持ちが伴う。
「役人あがり」

以前の職業を「好ましくないもの」とするムードが漂いますので、「あがり」もあまりお勧めではありませんが、少なくとも「くずれて」来るよりは「あがって」来た方が好ましいかと。


次に行きましょう。

最近妻と入った店で見たんですが、「ネギまみれ豚ショウガ焼き」なんて名前の料理がメニューにありました。

私は料理より言葉の方にはるかに興味がありますので、「まみれ」が気になる気になる。「まみれ」ってやっぱり語感が良くないですよね。

日本国語大辞典(精選版)は、「まみれ」をこう定義しています。

〘語素〙 (動詞「まみれる(塗)」の連用形から) 他の語の下に付いてそのものがついたりしてよごれる意を表わす。「汗まみれ」 「血まみれ」 「泥まみれ」など。

そうですよね、「汚れ」のイメージが強いんです。「ネギまみれ」と言われると、ぐちゃぐちゃにネギが混ざった小汚い「エサ」的なものが目に浮かんでしまいます。

「ネギいっぱい豚ショウガ焼き」「ネギだくさん豚ショウガ焼き」ぐらいにした方がいいんじゃないかなと思うんですが、店長さんに指摘するのも変な話ですし……。もし指摘したら、かなり妙な客としてマークされるの必至ですよね(笑)。

ということで、新規開店なさる方々は、当塾へのご相談をお忘れなく(嘘です)。