MotoGPツインリンクもてぎ(2017年第15戦)観戦記

先週の日曜日(2017.10.15)、栃木県のサーキット「ツインリンクもてぎ」に行ってきました。MotoGP世界選手権シリーズ第15戦日本グランプリを観戦するためです。

MotoGP関連ニュースを読まない日はないという私なんですが、いかんせん茂木(もてぎ)は遠い。「ツインリンクもてぎ」は栃木県と茨城県の県境にありまして、関西人からするとほとんど福島県の手前という感覚。

世界最高峰のモーターサイクル・ロードレース世界選手権をMotoGPと呼びますが、例年、世界を股にかけて年間18戦が行われます。欧米諸国(特に欧州)は開催回数が多いんですが、日本では「ツインリンクもてぎ」での一戦のみ。

何年も日本戦を見に行く機会をうかがっていたんですが、なかなか時間が取れませんでした。今回、今年こそはと5月ごろから計画を立てて、何とか時間をひねり出し、関西から駆けつけた次第。

結果から言うと、もう最高。至福の観戦でした。この一週間、頭の中で何度も何度もレースを再生していたぐらいでして(もちろん仕事の時以外ですよ)。そりゃそうなんですよね、私にとっては「モーターサイクルの神々」である最高峰のレーサーが、命を懸けて戦う現場に居合わせているわけですから。

今回、関西から栃木までえっちらおっちらと出かけてMotoGPを観戦したことによって、関西人がツインリンクもてぎで観戦する際の、移動のコツ・持ち物のコツも色々と分かったので、また別の記事で情報を書いておこうと思います。

う〜ん、一応塾ブログなのであんまり関係ないことばかり書いていてもいけないんですけどね。他の関西の方々のMotoGP観戦に役立つと思うので……。ご容赦をば。

で、この記事では一素人が観戦して興味深く思ったことを雑記風に記しておきます。ここ以降は、モーターサイクルやMotoGPに興味のない方には全く興味が持てないと思いますのでお読み飛ばし下さいませ。


もし興味を持たれた場合は、下掲のドキュメンタリー映画の予告編が分かりやすいと思います(本編は私もまだ見ていないんですが)。最高峰のライダー6名を中心とした構成、ナレーション担当はブラッド・ピット。

ブラピもMotoGP好きでして、レース中継映像を見ていると、時々子どもとパドックを訪れているシーンなんかが見られます。ナレーションは前作・前々作を担当したユアン・マクレガー(この人もバイクオタク、私が贔屓にしている役者さんです)の方が上手い気がするんですが、そんなことはどうでもいいですね。

ちなみに、6名の内、4名は現役続行中。残り二人のうち、一人は絶好調のうちにレーサーとしてのキャリアを終え(賢明だったと思う)、もう一人は衆人環視のサーキットの上で悲劇的な事故を起こし世を去りました(MotoGPファンにとってあまりにも衝撃的な事故だった)。

映画『ヒッティング・ジ・エイペックス』予告編

雨の降りしきる中で

さて、2017年のツインリンクもてぎ戦は、金曜日のプラクティスも、土曜のクオリファイも、日曜のファイナルもすべて雨。レースの内容自体はあまり期待できないのではないかとの予感もあったんですが、いざ蓋を開けてみると、今年のベストレースとの評も生まれるほどの超熱戦となったのでした。

生で観戦した観客は(もちろん私も含めて)、一日中雨に降り続けられたにもかかわらず、皆が満面の笑み。来て良かったあああ〜!私は金曜も土曜も朝から晩まで大阪で仕事ですので、日曜の決勝しか見られなかったんですが、それでも大満足。

気温低し、雨強し、屋根無し、傘差せず(後ろの人が見えなくなるので傘禁止なのです)、頼れるのはカッパのみ。晴れればもっと楽しいのに……なんて思っていたんですが、いざ「神々」のウォーミングアップ走行が始まると、そんなことはすっかり忘れてました(笑)。

The DOCTOR はヴァレンティーノ・ロッシの愛称。物販も大盛況。街でVRとか46とか書いてあるものを身に付けている人がいれば、それはロッシファン。

ミシュランのキャラクター、ウ○コマン、じゃなかったビバンダム君。正式名称で覚えてあげようね。

かつて優勝を争ったマシンが一堂に展示されているブースがありました。このマシンは故ニッキー・ヘイデンのRC211V。まさか「故」と表現せねばならない日が来るなんて夢にも思わなかった……。

ウォーミングアップを観るのも楽し

ウォーミングアップ走行でも一般人から見ると(普通のレーサーから見ても)凄まじいレベルで走行しているので、すごく面白いんですよね。

ネットの中継映像・音声ではよくわからなかったかったんですが、レース本戦とは異なり、各バイクがばらけがちになるウォーミングアップでは、バイクの排気音から各人のエンジンブレーキの使い方がよく分かります。バシュッ!バシュッ!バシュッ!と第1コーナー直前で一気にシフトダウンする選手も多いんですが、印象的だったのがホルヘ・ロレンソ。バシュッ!……バシュッ!……バシュッ!……と確実に間隔を空けてシフトダウンしてからコーナーに進入してゆきます。ああ、やっぱりロレンソって理詰めで繊細なライディングをする人だ。

ロレンソのヘッドフォン・ロッシの動作

決勝前のピリピリしたムードも、スタート地点のそばで直接に観戦しているとよく分かります。ロレンソはいつもヘッドフォンで音楽を聴いて精神統一を図っているんですが、ヘッドフォンが去年と違って赤色になっています。彼が現在所属するドゥカティのコーポレーションカラーに合わせているんだなあ。チームからの指示なんでしょうか。

ヴァレンティーノ・ロッシの大ファンなので、彼を中心に観察していたんですが、ロッシ、股間をしきりに気にしたり(イタリア人コメディアンは彼の物まねをする時この動作を良くまねるらしい)、グラブを何度もチェックしたり。20年以上にわたる華々しいレースキャリアを積んだ男でも、この場では緊張するんだ……。

物凄い男達の凄まじい音圧

しかし、物凄い男達が一堂に会しています。一人だけを見てもすごいオーラをまとっているのに、そんな男達が20名以上並んでいる。闘争心を隠すこともなく。ロッシが、マルケスが、ロレンソが、ペドロサが、ヴィニャーレスが、ザルコが、ドヴィツィオーゾが!

私はほとんど野球を知らないので間違った喩えになっているかもしれませんが、最盛期の長嶋と王と松井とイチローなんかが、相手に打ち勝つべくグラウンド上で互いににらみ合っている感じとでも言えばいいんでしょうか。

各バイクが一斉にスタートするシーンは、凄まじい迫力です。観客の方にも「音」というか「音圧」が襲いかかる感じです。今でも「暴走族」という人たちがいますが、あの集団の中に入って感じる音の30倍ぐらいの大きさの音です。イメージ的には(笑)。

スタート直前。左からJ.ザルコ、D.ペトルッチ、M.マルケス、A.エスパルガロ、J.ロレンソ、D.ペドロサ。

これほど美しいスポーツを知らない

エリート中のエリートであるライダーが全身に闘争心を漲らせて第1コーナーに突入する様は、もう言葉で表しえない美しさ。このスポーツは本当に美しい。目に涙が浮かぶような、全身に電流が走るような思いで見つめていましたが、ホールショットはマルク・マルケスがゲット。

降雨の中の決勝ということで、普段とは違う結果が出がちな状況でしたが(ドライコンディションの時よりもライダーのスキルによる差が出やすい)、ペトルッチ・マルケス・ドヴィツィオーゾの三者が先頭集団を形成します。ペトルッチって、会見場ではいつも「いい人」ムードでユーモアもあるライダーですが、レインコンディションに強いイメージがあります。今日はこのままゴールまで突っ走るか。もしそうなれば最高峰での初勝利となります。

ヴァレンティーノ・ロッシ転倒リタイア

レース周回数は24周(距離にして約115km)だったんですが、6周目でヴァレンティーノ・ロッシが転倒!うわわああ!私はロッシ(モビスター・ヤマハチームに所属)のファンですので、「ヤマハ応援席ブース」に席をとっていたんですが、周りからも大きなどよめきが……。

大型モニタに映る呆然たるロッシの姿。私も大いにガッカリしたんですが、気になるのは骨折したばかりの右足の具合です。悪いことに右側に転倒していたので気になったんですが、大きなダメージは無さそうで少し安心。

ロッシ、少し前にオフロードのトレーニングをしていて右足腓骨を骨折してしまい、今期が絶望視されたんですが、事故から18日後にはサーキットに戻ってきてバイクを走らせていたんですよね。しかも復帰直後のスペイン・アラゴン戦では、予選で3位、決勝でもしばらくトップグループを牽引して5位という好成績を収めるという具合。この気迫と執念。ロッシが多くのファンを惹きつける理由はここにあるんだと思います。超人過ぎる。

実際、もてぎでもロッシのナンバー「46」のウェアやキャップを着用している人だらけです。もちろん、持ち前の華やかさやユーモアもロッシの大きな魅力なんですけどね。年収30億とも40億とも言われる花形スターの退場に、ヤマハ・ブースの観客一同、落胆しきり。

ロッシとヴィニャーレスが乗る今期のマシンYZR-M1。ロッシ、去年も日本戦は転倒リタイア。嗚呼。

各チームピットを観察する

私が陣取っていた席からは各チームのピットの様子が結構よく見えたんですが(距離にして70メートルぐらいでしょうか)、ヤマハピットのクルーたちも意気消沈しているのがよく分かりました。チームメイトのヴィニャーレスのマシンもあまりうまくサーキットに適合していないようでしたし……。

それとは反対に、モビスター・ヤマハの隣の隣に位置するドゥカティのピットに徐々に熱気が満ちてきていることも察せられます。というのも、ドヴィツィオーゾが快走を続けており、上位入賞が望めそうでしたから。

ロッシの46とヴィニャーレスの25が見えます。

ドヴィツィオーゾとマルケスの一騎打ち

ドヴィツィオーゾ、決して才能の無いライダーではないと思いますが、去年までは上位の常連という感じはあまりありませんでした。今年は何が起こったのか猛進撃が続いており、第14戦までの累積ポイントランキングが2位だったんですよね。マシン性能の向上があったのか、ドヴィの経験とマシン性能という歯車がかみ合い始めたのか、私にはよくわかりませんが……。

この日本戦でも、難しいレインコンディションの中、天才的ライダー(としか言い様がない)マルク・マルケスの異常なライディングに、十分以上に伍して闘っていました。

ペトルッチが3位に落ち、最終的にはドヴィツィオーゾとマルケスの一騎打ちになったんですが、この二人の凄まじい争いは最終ラップにまでもつれ込みます。

最終ラップの最終コーナーで、わずかな隙をついてドヴィツィオーゾがマルケスをパス。僅差でドヴィツィオーゾが勝利を手にしました。先述したように、私の座っていたのはヤマハ応援ブースだったんですが、誰もがこの二人に心から惜しみない拍手を送ります(もちろん私も)。熱い漢同士の命がけの戦いに、観客一同、痺れまくり。

このあたりは映像を見てもらったほうが早いですね(リンク先で見られます)。限界を迎えているタイヤなのに、ドヴィがレイト・ブレーキングでコーナーに進入してゆく様がよく分かります(2:50頃、マシンが異常な振動を起こす)。今回は老獪なドヴィツィオーゾの勝利です。

MotoGP Rewind: A recap of the #JapaneseGP

ジジ・ダッリーニャ

ピットからはドゥカティ・チーム・ディレクターのジジ・ダッリーニャも駆け出してきました。彼の姿は中継映像でよく見かけるんですが、今日は本当に心から嬉しそう。「おお、ほんまもんのジジや〜!」と心の中で叫びつつ、彼を祝福します。

ジジ、エンジニア出身のイタリア人なんですが、この風貌、一度見たら忘れられないですよね?眉毛が一直線で(笑)。何か好きなんだよな〜、この人。上記ビデオでも歓びを爆発させているシーンが見られます。

ジジ・ダッリーニャ

(画像はhttps://as.com/motor/2016/09/14/motociclismo/1473849381_423006.htmlから引用)

表彰式を観てからサーキットを後にしましたが、帰りの新幹線内でもレースを反芻することしきり。「はぁ〜、次に乗るバイクはドゥカティもいいな〜♡」なんて思いながら、車中で気になるマシンのスペックを調べまくる私は、はっ!メーカーの販売戦略に完全に乗せられています。ミーハーですが何か?(笑)