本川達雄『ウニはすごいバッタもすごい』と当塾のルール

先日の日曜日、本川達雄『ウニはすごいバッタもすごい-デザインの生物学』を読んでいたんですが、これ、めちゃくちゃ面白いです。まだ読んでいる途中なんですが、個々の生物の持つメカニズムに驚嘆しっぱなし。

生物のメカニズムって、「生命の神秘」なんて単純な言葉で片づけられるような代物ではありませんね。人間の想像力・創造力をはるかに凌駕しているように思います。あまり踏み込むと宗教の話になってしまいますので、軽く触れるだけにしますが、ダーウィニズム・進化論を否定する人の気持ちも分からなくはありません。こんな異常なほど精巧なメカニズム、「超越者」の存在を措定したほうが確かに納得しやすいよね……。

それはさておき、『ウニはすごいバッタもすごい』で説明されている興味深い話題を少しご紹介してみましょう。

生物はもともと海で生まれ、30億年以上海だけで生活してきました。陸へ上がってきたのは4億5千年前。最近の話です。しかも、上陸に成功したのは極めて限られた生物だけ。上陸したからといって、海・水を捨てられたわけではなく、生物は体内にじゃぼじゃぼの水環境が必要なままです(水環境がないと生命維持に必要な化学反応が得られない)。

というわけで、上陸した生物は体内に海・水分を抱えているわけですが(重量にして6〜8割らしい)、乗り越えないとならない大変な課題があります。それは「乾燥」。体から水分が蒸発してしまえば、生体化学反応が進まず生きてゆけなくなります。

で、ここからがブログでご紹介したいと思った内容。実は「乾燥」はとりわけ体の小さな生物ほど問題になるらしい。これは数学的に証明されています。といっても、中学レベルの数学なので難しくはありません。「^」の記号はべき乗だと思ってくださいね。

生物の体を球形だとして直径をdとします。

表面積 S=πd^2
体積 V=πd^3/6
体積当たりの表面積 S/V=(πd^2)÷(πd^3/6)=6/d

球形の体積当たりの表面積は直径に「反比例」することが証明されました。この話を生物に置き換えれば、「体が小さいと、体積当たりの表面積が相対的に大きくなる」ということになりますよね。

一方で、体の体積は「体が持っている水の量」に比例し、表面積は「水の損失量(乾燥量)」に比例します。水は体の表面から乾燥してゆきますからね。

結果、小さい生物は手持ちの水の量が少ないのに、逃げていく水の量が相対的に多いということになります。そういう理由で、小さなものが陸上で生活するのは大変に困難なわけです。

全生物のうち、もっとも種数が多いのは昆虫なんですが(全生物種の7割が昆虫らしい)、昆虫は体が小さいですよね。じゃあ、どうやって乾燥に対抗してきたのか。

それは、クチクラという撥水性の材料で体をすっぽり覆うことによってです。つまり外骨格ですね。体内から水分が失われないよう、節水型の体にしてあるわけです。このクチクラというのがまた凄まじく良くできた素材で、驚く話ばかりが紹介されているんですが、詳しくは実際にお読みいただければと思います。


さて、ようやく、小さなお子さんもお預かりする塾として言いたいことにたどり着きました。

大人よりも身体の小さな子どもは、脱水症状・熱中症に陥りやすいので、この時期、ぜひ対策をしてあげてください。具体的には、炎天下に長時間滞在させないとか、水分をこまめに補給させるとか。

ちなみに、当塾、授業中にものを食べることは固く禁じていますが、水分の補給は他人に迷惑をかけない限り自由ということにしております。

はい、このルールの妥当性が数学的に証明されました(笑)。