近ごろ手に入れてもっともハイになりしもの。小田勝『実例詳解古典文法総覧』(和泉書房)。
文法大好き、文法死ぬほどフォーリンラブ、みたいな私にとって宝物のような書籍がやってきました。
発刊された当初から気になって仕方がなかったこの古典文法体系書、今年の誕生日プレゼントにしてもらおうかなとチェックしていたんですが、なかなか現物にお目にかかる機会がありませんでした。
普通の書籍ならAmazonでポチッと購入するだけなんですが、税込みで8400円となると、ちょっと躊躇します。素晴らしい本なら全然惜しいとは思わない価格ですが、普通の文法書を水増ししただけの書の可能性もありますしね(実際、文法好きな私からすると、そういう書は少なからずある)。
そんなわけで、繁忙期の夏休みに入るまでにちょっと実際の内容を見ておきたいと思っておりまして、某日、ジュンク堂の某大型店舗に出かけてみました。無駄足を踏むのはいやなので、前もってネットで在庫を調べたところ1冊あり。やったぜ!
で、その店舗に行っていくら探しても『実例詳解古典文法総覧』が見つかりません。日本語学の棚を隅から隅まで探しても見当たらない。辞書・リファレンス関係の棚を見ても見当たらない。日本古典文学系の棚もまた然り。あなたのおうちはどこですか。困ってしまってワンワンワワン。
店員さんに尋ねると、同じところを探し始めます。やっぱりない。端末を叩き、数人で店内を走り回ってくださったんですが、やっぱりない。最終的にはネット上の在庫情報が間違っていたと判明し、平謝りされました。いや、いいんですけど、また実物が見られなかった……。
出版元の和泉書房は国語・国文学系の学術専門書を扱うマニアックな(失礼)出版社ですが、実は当塾の近くにあります。天王寺図書館や上宮高校のすぐそば。実際に訪ねて現物を見せてもらうことは可能なのかな、とも思ったんですが、人の手を煩わせて「やっぱり要りません」とは言いにくいしなあ……。
で、その日の晩、Amazonのプライムセールが始まりました。塾関係のPDF書類を閲覧する端末としてタブレットのFireHD8を購入。驚くほどの安さ(iPadの15%ぐらいの価格)にびっくり。原価販売ちゃうん、これ(笑)。
それはさておき、書籍の方も見て回ると、うおお、全書籍ポイント10%還元じゃないですか。Amazonをよく利用する私にとっては実際上10%引きセールです。
件の『実例詳解古典文法総覧』を見ると、あった〜〜!もう中身なんて見なくていいや、どうしても欲しい。というか、きっと僕には君が必要さ。瞬間的にポチってしまいました。
翌日、タブレットとともに到着した『実例詳解古典文法総覧』。待ちきれずにAmazonの箱をぐしゃぐしゃと破ります。取り出して適当な場所から読み始めます。開いたところは「ずは」の説明でした。
く〜〜っ!最高!多分、お酒好きな人が最高の日本酒に出あった時ってこんな感じじゃないでしょうか。内容についてはまたいずれレビューするとして、とにかく最高なんです。知りたかったことが見事に整理されていて、豊富な用例がそれをバックアップしています。ハァハァ。散乱した段ボールの横にしゃがみ込んで読むことしばし。恍惚。
なお、高等学校で学習する古典文法とは全く異なる体系にもとづく書であり、質・量ともに大学受験生レベルには全く不要の書です。日本古典文学を専門的にやろうという大学生・大学院生以上の人以外には全く無用でしょう。
帯にも示されていますが、モダリティ、テンス、アスペクト、ヴォイスなどといった言語学的な文法用語で解説がなされていますので、ちょっと素人さんお断り的なムード。でも、個人的には、そうした古典文法の体系書が欲しかったんですよね。
736ページと大規模な書ですが、いつか通読したいと思います。最高級の古典文法書を入手して、上機嫌きわまりない今日この頃。
古典文法好きな方のためにクイズ。Amazonの内容紹介にも記されているんですが、「古典文法上、『めりけり』といえるのか」。文法の腕に覚えありという方、どう思われますか?。
ドイツの首相?と思った人は退場です(メルケル……)。
詳しい方のために、もう少し話を続けましょう。
理屈で考えてみて、推量の助動詞「めり」に過去の助動詞「けり」が接続することはありえる気がしますよね。『〜なようだった』と訳せそうですしね。
でも、直感的には何かひっかかるものがある。なぜかは説明しにくいけれど、何となくダメっぽい。う〜ん、どうなんだろう。
この『実例詳解古典文法総覧』はその疑問にしっかりと解を与えてくれます。答えだけ書いておきますと、助動詞の相互承接としては珍しいものの、実際に存在することが確認されているとの由。栄花物語や狭衣物語からの用例も示されています。
こんな疑問はこの書がないと一生解けなかったはず。古語辞典レベルでは掲載されていませんからね。
今後、永い付き合いになること必至の古典文法体系書です。