完全少人数制宮田塾の方では、小学1年生も指導させてもらっていますが、彼・彼女らが漢字を書いているところを見ていると、書き順があやふやなことが結構あります。書き順に関する問題は比較的正答率の低いところだと言えるでしょう。
特によく間違いを見かけるのが、「右」と「左」の筆順です。
「漢辞海」から引用
指導の方法はこうです。
「右」は右側の画から書き出す→つまり、「ノ」の方から書く
「左」は左側の画から書き出す→つまり、「一」の方から書く
こう指導すれば、大抵の生徒は間違わなくなります。
生徒に話すのはここまで。
ここからは大人向きの話。
教えていて言うのも何ですが、私などは、そもそもこんなことを覚える意味があるのかどうか自体疑問に思います。文部科学省の示す「筆順・書き順」そのものが極めて不合理なものだからです。
この点、書き始めるとどんどん長くなるので、深入りはしませんが、漢字の書き順は厳密に定まっているものではありません。大原則(左から右・上から下)さえ守っていれば問題はない。
偉そうに言わせてもらうと、文部科学省の示す「筆順・書き順」を金科玉条のように奉ずるのは、小学校漢字教育の悪癖だと思います。漢字学的に見て、ほとんど意味のない些末な知識を無批判に受け入れて垂れ流すような指導は、できれば止めて欲しいんですよね。塾としても振り回されておりまして(笑)。
そもそも漢字って、もっと自由な文字だと思います。象形文字を考えてみて下さい。さかなの絵が「魚」に、うまの絵が「馬」になったわけですよね。「絵」に書き順があるというのは奇妙なことです。漢字の祖国中国で、筆順を細かく学ぶという話も聞いたことがありません(そもそも日本とは大きく筆順が違うらしい)。
<参考記事>
中国と日本では、漢字の筆順が違うようですが、どうしてでしょうか?|漢字文化資料館
(筆順制定に至る経緯が分かってとても面白い)
私のような軽輩が言っても説得力はありませんが、漢字学の大家でいらっしゃる白川静先生や藤堂明保先生も、筆順不要論を唱えていらっしゃったはず。現場にいる者からすると、書き順への過度の拘泥は、漢字教育の面で弊害が大きいと思われてなりません。
だいたい、上記の「右」と「左」なんかは、その最たる例だと思います。白川静先生の説によると、この二文字の「ナ」の部分は「手」を表しており、「ロ」「エ」の部分は祭祀に用いる器具を表します。
「ナ」の部分は同じ「手」を意味する部分なのに、文字によって書き順が変わるというのは、極めて落ち着きが悪いですよね。少なくとも、漢字を(書道的な観点ではなく)意味論的に捉えたとき、納得は極めて難しい。
そう考えると、漢字をあまり知らない小学1年生の方が、「右」と「左」の筆順を統一させていて、ある意味合理的だとも思えてくるんですよね。
ま、当方は塾ですので、成績を伸ばしてもらうことが第一義。上記のようなことはおくびにも出さず、「右は右の画から書くよ〜 左は左の画から書くよ〜」なんてニコニコと指導しております。