仕事柄、古文を読むことが多いんですが、古文を高尚なものだと思う必要はないと思うんですよね。いい加減なことが書かれていたり、「これどう考えてもタダの自慢話じゃん」と思うようなことが書かれていたりします。かなり際どい下ネタ的な話もあったり。そういうネタはブログに書けませんが……。
まぁ、人間の感情が昔と今とで大きく変わるはずもなく、本質的には同じようなことで喜び、同じようなことで悲しんでいるわけです。ただ、生活環境は大きく異なりますから、その点では違いがあります。住環境の差、医療環境の差、交通環境の差などなど。その中でも、情報環境の差=インターネットの有無はかなり大きなものではないでしょうか。
そんなわけで、もし平安時代や鎌倉時代にインターネットがあったなら、と時々想像するんですが、古典文学界には、結構ネットに親和性の高い人々が集っているように思います。
まず清少納言。彼女はまず間違い無く、ブログを運営していただろうと思います。そもそも『枕草子』ってブログ記事集ですよね?春はこんな時間帯がいいのよね〜とか、ちっちゃい子がホコリを見つけて持ってくるのがかわいいのよね〜とか。
彼女の場合、一つのテーマでひとまとまりの文章を書くんですが、その息づかいというか文章の長さが、ちょうどブログ一記事ぐらいにあたります。ツイッターやフェイスブックのように細切れになってしまう文章は、彼女の趣味に合わなかったろうと思います。
あと、吉田兼好もすごくブログ的な発想の人だと思います。『徒然草』は面白い文章の宝庫ですが、あまり前後の脈絡はありません。というか、かなり矛盾した内容が含まれていたり、いい加減なことが書いてあったりします。厳密な体系書をものすというタイプではなく、日々思ったことをつらつらと書くタイプなので、ブロガーにピッタリなのではないかと。そもそも『徒然草』とは、退屈しのぎに書いたものというぐらいの意味ですしね。
逆に、鴨長明なんかは、あまりブログを好みそうではありません。しっかりとしたウェブサイトを構築して、計画的に運営しそうなタイプ。方丈記.jp とか独自ドメインを取得したりして。コメント欄なんかも設けて、読者の悩みにしっかりと返事をくれそうな気がします。ただし返事は無常観漂う重い感じでしょう(笑)。
紫式部はバランス良く各方式を使い分けそうな気がします。ブログで新作小説を発表、ツイッター・フェイスブックで読者の反響を聞き、それを新作に反映させる。ブログ記事が集まったら、ちょっと改訂を加えて、ウェブサイトにまとめて置いておき、誰もが読めるようにしておくなんて感じでしょうか。ちなみに『源氏物語』は、当時の読者の反響を受け入れながら書き進めていったと言われています。
紀貫之は、いわゆる「ネカマ(男性であるにも関わらずネット上で女性として振る舞う人)」。女性の振りをして、Yahoo!知恵袋とか、読売新聞の発言小町にバンバン投稿していそうな気がします。ちなみに『土佐日記』は日記文学の嚆矢ですが、紀貫之は女性の振りをして書いています。
和泉式部だと、あまりネット上にプレゼンスは持たないような気がします。その代わりに、好きになった男性に情熱的なメールを送りまくるのではないかと。それも真夜中に。文章が洒落ていて情熱的なので、送られた男性も困ったような嬉しいような気になるという感じ。
後白河法皇。「今様歌(いまやううた)を謡ひてけり」などと題して、自分が歌っているところを撮影した動画を、ニコニコ動画やYouTubeにアップロードしまくる気がします。結構丁寧にコメントも返してくれそう。ちなみに彼の編んだ『梁塵秘抄』は当時の歌謡集。
江戸時代だと、井原西鶴あたりはツイッター・フェイスブックの中毒者のように、膨大なツイートを投げまくったに違いありません。新しもの好きですし、強い顕示欲と異常なほどの創作意欲が同居している人ですしね。おそらく「一日に23500ツイート達成!」みたいな記録をめざしたことと思います。実際に、興行として一日で23500句の俳句を詠んだことが記録として残っています(凄すぎ)。
逆に松尾芭蕉だと、侘びの美学を感じさせるウェブサイトを構築しそうです。写真も一眼レフで撮影した高品質な画像を使いそう。同門の集いの連絡や、各地の興行予定の告知に使える掲示板も併設されていそうな気がします。彼の性格から言って、掲示板とメールは毎日欠かさずチェックするはず。僻地によく行くので、携帯電話の電波状況にはうるさいと想像します。
時代は遡りますが、太安万侶なら間違い無くネット上に伝承のデータベースを作成するはず。稗田阿礼が内容を考えて、太安万侶がウェブサーバ上で高度なデータベースを作成するでしょう。
そうそう、宇治拾遺物語の筆者(未詳です)なんかは、2ちゃんねるあたりの掲示板に、色々なネタを投下していそうな気がします。「詐欺を働いた聖がフルボッコにされた件」とか「下半身裸でたき火の上を飛んだら熱すぎワロタ」とか「安倍晴明、霊能力強すぎ((;゜Д゜)ガクガクブルブル」とかいうスレッドを立てて(笑)。ちなみにいずれも本当に宇治拾遺物語に収録されている話です。
タイムマシンがあったなら、彼らを平成の世に連れてきて、しばらく観察してみたいものです。