問題文への線引きは必要か
今日は、中学受験生およびその保護者様方からよくいただく質問を一つご紹介したいと思います。
それは「問題文にどのように線を引けば良いか」「問題文へどのように線を引かせれば良いか」というご質問。受験を控えた小学6年生のみならず、小学低学年の保護者様からもよく伺うご質問です。
結論から申し上げますと、「別に線は引かなくて良い」ということになります。別の言い方をすれば、「好きなところに引けば良い」。
身も蓋もない回答なので不興を買うかもしれませんね。もう少し丁寧に説明しておきましょう。
まず、私が授業をする際、論理的な文章(説明文や論説文など)については、必ず当方から指示を出してカラーペンで線を引いてもらっています。線を引く部分は、その文章の肝になるところ・文章の骨組みにあたるところです。後でその部分をまとめて読めば、文章の要約が浮かび上がってくるように考えた上で線を引いてもらっているわけです。
私の方では授業準備の際に、問題文を一度読み、文章の構成を考え、再度読みながら線を引くという作業をしているわけですが、その際、一番指導効果が上がるよう計算したうえで線引き部分を考えています。
「この部分は問題提起部分だから線を引かせよう。ただ、かなり冗長な問題提起になっているから、ここに限局して引かせよう」
「ここは根幹にあたる説明部分だから本来なら線を引かねばならないけれど、具体的すぎて抽象性を欠く部分が多いから、再度言及される後の段落の方で線を引かせよう」
「ここは具体例だけど、これを押さえておかないと、第2の問題提起に繋がりにくいから、あえて線を引いてもらおう」
「結論が何度も述べられるけれど、一番端的にまとまっているこの部分だけに線を引いてもらおう」
といった感じで線引き部分を考えておくわけです。そしてそのレベルまで考えて引くのでなければ、線引きの意味はほとんどないと思います。
で、小学生がこういったレベルで文章を認識できるかというと、それはほとんど無理難題に近い。このレベルで文章を把握できるようになるよりも先に、国語で満点を取るとか、国語の偏差値が80程度になるといった事態が来ます。
要するに、(こと中学受験生に関しては)出題文にしっかりと意味のある線引きをして、その上で問題を解こうという考えは捨てた方が賢明です。それは偏差値が80程度になって「もう国語の勉強はやることがないな〜」なんて状態になってから、趣味的にやって下さい(笑)。
間違わないでいただきたいんですが、「問題文に一切線を引くな」と主張しているわけではありません。問題に取り組む際に「ここは結論を述べていて何だか大事そうだぞ」とか「この部分はよくわからないな」とかいったところがあって、そこにマークしておきたいのならば、どんどん問題文を汚してもらってかまいません。
ただ、「線引きが出来ないと問題が解けない」と思い込んだり、線を引いているうちに時間が経って問題を解ききれなかった、なんて本末転倒な事態を避けて欲しいと思っているだけです。
今までの指導経験上、国語で高得点を取る人をたくさん見てきましたが、線引きについての共通性はほとんど見られません。全く線を引かない人もいれば、接続語だけ丸を付ける人もいます。それとは逆に、文章の95パーセントぐらいに線を引く人もいます。それは全く線を引かないのと同じではないのかとも思うんですが、おそらくその人達は、線引きをした方が頭に文章のイメージを築きやすいのでしょう。本当に人それぞれ。そしてそれで全く構いません。
それでもやっぱり線を引きたい人のための「問題文への線引きの方法」
でもやっぱり勉強のために線を引きたい?強情な人ですね、いや、勉強熱心な人ですね(笑)。当塾では、そうした中学受験生の生徒さんには、こんな方法をお薦めしています。
論理的な文章は形式段落に分けられている。
↓
各形式段落はいくつかの文から構成されている。
↓
各形式段落で一番重要だと思われる文を「一つだけ」選んで線を引く。
筆者は文章を無意味に形式段落に分けているわけではありません。何らかの考えに基づいて文章を分割・配置しているわけです。そうであれば、各形式段落に少なくとも一つの「言いたいこと」が含まれていると考えるのは自然なことですよね。
ここでのポイントは「一つだけ」に絞って線を引くということです。
もちろん「一段落=一主張」というのはあくまでも原則論であって、例外はいくらでもあります。ただ、そこで手を広げないほうが良い。機械的に「一つだけ」に絞る。逆に重要部分が無さそうな段落でも、あえて「一つだけ」線を引く。
あまり線引きにこだわって逆に文章が読めなくなるとか、得点できないとかいった事態は是非避けたいところだからです。上記のような方法でも、中学受験生には結構な負担だと思います。これ以上踏み込む時間があるなら、算数など他の科目に注力する方が、合格可能性は高まるはず。
問題文を読む際は、文章への線引きにはこだわらず、「筆者は何を言いたいのか」を読み取ることに力を注いでいただければと思います。受験生の皆さん、頑張って下さいね。