マンガを一気読みする -『ゴールデンカムイ』のススメ

日本のマンガって本当に凄い表現形態だと思っています。絵そのものはもちろん、ストーリー展開、構図、キャラクターの立ち方、世界観、そのどれもが超ハイレベル。

海外のコミックを詳しく知っているわけではありませんが、アメコミなんかを見てみると、ストーリーに絵がついただけで、絵の多い小説とほとんど変わらないようなものが多い気がします。ヨーロッパの作品も悪い意味でアーティスティックでエンターテインメントとしての迫力を欠く……。まあ、偏見なのかもしれませんが。

身内贔屓というわけではないんですが、やはりマンガという表現域に関しては、日本の作品群が他国の作品群に何馬身もの差をつけて走っている気がします。

日本語話者が、ひらがな・カタカナという表音文字だけでなく、漢字という表意文字を多数使うことが、日本のコミック隆盛の主因だという話を聞いたことがあります。養老孟司氏が言ったのでしたっけ(間違ってたらスミマセン)。

漢字=表意文字はほとんど「絵」ですから、(マンガでない)普通の日本語を読んでいる時点で、既に脳内では「絵」と「文字」を並行処理しているわけです。そんな言葉に子どもの頃から触れていれば、そりゃ「絵」と「文字」の並行処理をしながら味わう表現形態、つまりマンガに親しみを感じないはずがありません。

もちろん私もマンガが大好き。幼い頃から今に至るまでいつもマンガはそばにありましたし、これからも色々な作品を読んでいくのだろうと思います。幼い頃との違いは、気に入ったマンガを一気買いできる経済力があるということです。

加えて、最近はメルカリやヤフオクといったルートで簡単に、一気買い・一気読み・一括売却できますので、もう長編マンガを全巻読めと言われているようなもの。ほとんどレンタル感覚です。

ここ半年ほどで紙書籍で手に入れて読んだマンガは次の通り。

しげの秀一『頭文字D』

なんで今更「イニD」なのかと言われそうですが、iPadのコミックアプリで最初の数話が無料配信されていたのがきっかけ。数話読んで、全巻読もっ!と思いメルカリで購入しました。しげの秀一『バリバリ伝説』(バイク漫画です)は高校生の頃に友人達と読んでいたんですが、「イニD」は自動車漫画ということで無視していたのでした。

内容は完全にスポ根もの。関東の峠道を使った公道レース(もちろん違法です)に賭ける青春。主人公は豆腐配達という家業のために中学生の頃から自動車を運転しており、知らず知らずのうちに神業的ドライビングテクニックを身に付けています。当初のライバルは、大きなクリニックを営む医師の息子達。兄はイケメン秀才で群馬大学医学部の学生。精緻な理論で公道最速を目指しています(ここら辺なかなかリアルな設定で面白い)。

ほとんどがレースシーンなので「ギュオオォォ!」「ギャリギャリギャリッ!」「グイッッッッ!」みたいな擬音語で90パーセントぐらいが構成されているマンガです。読むのに時間は掛かりません。すごい速さで読む方が雰囲気も出ます。50巻程度を2日で読了。

小川悦司『中華一番!』『真・中華一番!』

なんで今更『中華一番!』なのかと言われそうですが、iPadのコミックアプリで最初の数話が無料配信されていたのがきっかけ。数話読んで、全巻読もっ!と思いメルカリで購入しました(コピペですね)。

主人公が中華料理を通じて人格を形成してゆくマンガといっていいでしょうか。随分昔、NHKでアニメ化されていたようですね。極悪非道の裏料理組織と闘いつつ中国全土に散らばった厨具を集めていくというストーリーは王道的。『北斗の拳』と『ドラゴンボール』を高次元でミックスしたような感じです。主人公とヒロインの父の関係がなんかいいんですよね。

こちらは毎晩一巻ずつ読むことにしていましたが、読むのが楽しみで仕方ありませんでした。副代表に何回主人公リュウ・マオシンの話をしたか分からない。いっつもウザがられるんですけど(笑)。

森高夕次・足立金太郎『グラゼニ』『グラゼニ東京ドーム編』『グラゼニパリーグ編』

なんで今更『グラゼニ』なのかと言われそうですが、iPadの……(以下同文)。

野球には何の興味もなく、野球漫画にもほとんど興味を持たず育ってきたんですが、この作品は本当に面白く感じました。主人公はプロ野球を一つの「仕事」「金もうけ」と考え、いかに上手くキャリア形成をして年俸を高めていくべきかに腐心している男。といっても、嫌な男ではありません。むしろ真剣に仕事をこなす爽やかな快男児です。

そもそもこのタイトルは「野球のグラウンドにはゼニが埋まっとるんや、精一杯頑張ってゼニを掘り出さんかい!」という実在した某野球監督の言葉にちなんだもの。プロ野球はスポーツである一方で、仕事・興行である以上、ゼニ・カネの話とは切っても切れないはずで、そのあたりの事情をリアルに事細かく教えてくれる作品です。

何でも、某プロ野球選手に聞くと、普通の野球漫画はリアルさを欠いていて読む気がしないが、『グラゼニ』は実際の野球人生活にリアルに即していて、今までで一番面白いと感じたと述べたとか。選手がチームフロントとどのような感じで年俸を交渉しているのか、傷病治療中の選手の待遇はどうなっているのか、引退後のセカンドキャリアの収入はいかほどか、といった話題の方が野球そのものよりも大きく取り上げられておりまして、すこぶる面白いんです。個人的にはそんな話題なら興味ありありですから。これも全50巻程度でした。

野田サトル『ゴールデンカムイ』

昨日、電子配信でほぼ全話を読み終えたのが、野田サトル『ゴールデンカムイ』。

これ、完結記念なのか実写化決定記念なのか分かりませんが、現在絶賛無料公開中なんです(2022.04.28まで)。全31巻分のボリュームの無料公開ですから、超・超・太っ腹です。ありがとう!

この『ゴールデンカムイ』、話には聞いていたんですが、読み始めると面白すぎて止まりませんでした。この間の休日はひたすら『ゴールデンカムイ』を読んでいたほど。

ベースにあるのはアイヌ埋蔵金をめぐる各派閥の争い。樺太の少数民族・日本の軍部・戊辰戦争の生き残りが血なまぐさい抗争を繰り広げます。したがって残虐な殺戮シーン満載なんですが、作品のトーンは決して暗くない、というより、ギャグがちりばめられていてとても明るいものです。加えて、明治期・日露役頃の北海道の歴史、アイヌ文化、狩猟と料理が楽しく学べるというおまけ付き(というかこちらが本体なのかも)。

各キャラクターも異常なほど立っていまして、安心して熱中できました。不死身の杉元、アシリパ、谷垣源次郎、土方歳三(実は戊辰戦争の時に死んでおらず獄につながれていたという設定)が特にいい。皆が何かを背負っているけれど、それに打ちひしがれる者は一人もいません。どのキャラも力強く厚かましく己を貫いてゆく。

この記事の執筆時点(2022.04.20)で、無料公開終了までまだ8日間あります。GWの前のお楽しみとしていかがでしょうか。本当にお薦めです。ヒンナ、ヒンナ。

ブラウザで読みたい方はこちらから。
[第1話] ゴールデンカムイ – 野田サトル | となりのヤングジャンプ
https://tonarinoyj.jp/episode/10834108156629615343

タブレットやスマートフォンで読みたい方は、アプリ「ヤンジャン!」にて。
https://apps.apple.com/jp/app/id1351283922

見ていませんがアニメもやっていたんですね。
3分で振り返り!TVアニメ「ゴールデンカムイ」第一期スペシャル映像ッ!!