派遣切りと国語力

昨年暮れあたりから、報道でよく話題になる「派遣切り」

私、テレビは全くと言って良いほど見ないので、テレビがどういう論調で報じているのかはよく知りませんが、新聞を読んだり、ネット上で調べてみたりする限りでは、議論は大体二つの主張に落ちつくようです。

A.簡単にクビにできてしまうような法制度や社会システムが悪い。
B.クビになるのは自助努力が足りないからだ。自業自得。

極端に単純化すれば、「社会・会社が悪い」 vs 「クビになる本人が悪い」というところでしょうか。国語塾風に言えば二項対立的な議論ですね。(新聞はAの論調が多く、ネット上ではBの論調が多い気がします。)

このブログは塾のブログであり、どちらが正しいかはどうでもよいんですが(いいのか?)、少し気になった新聞記事をご紹介しましょう。

昨年暮れの毎日新聞に、「派遣切りを理由とした生活保護の申請が増えている」という内容の記事が掲載されました。要約すると、高校卒業後、非正規雇用で工場を転々としていたが、突然契約打ち切りを通告され、半ばホームレス状態になったという20代後半男性の話です。

話だけを聞いていると、確かに大変だな、と思うんですが、記事にある写真を見て、ちょっとひっかかる部分を感じました。

写真は生活保護申請書のクローズアップ。そこにはこう書かれています。

申請の理由「アパートを借りてふつうの生活がしたいです。」

よく見ると「借」という字が大きく間違っています。(この世にない字(?)なので、パソコン上のフォントでは表現できません。)

小学校で習う「借」という漢字を20代後半で間違う…。
しかも自分の生活・命をつなぐための大切な申請書を、(失礼ながら)稚拙な文章で書き、余白を大量に残して提出する…。

自治体の担当者も「真剣に申請する気があるのか?」と尋ねたくなったんではないでしょうかね。厳しいようですが、こういう人がちゃんとした履歴書を書けるとも思えず、したがって、再雇用されるまでの道のりもかなり厳しいものになるという気がします。

新聞記事は、彼に同情的な感じで書かれているんですが、私からすると、「至るべくして至った結果」という気がしないでもありません。書類を見るだけでも、彼のやる気のなさ・向上心のなさ(もっと言えば、小学生中学生時代の不勉強さ)が窺えるようなんですよね。私ですらそう思うのですから、いわんや百戦錬磨の人事担当者をや。

塾生達をこういう状況に落とすまい、万一そういう状況に立ち至ったとしても、こんな書類は絶対に書かせるまい、と決意させるに足る記事でした。

当塾では「漢字は大事だよ」「表現力は大事だよ」としつこく指導していますが、そういう背景もあるんですね。(ほんまかいな?)