以前も取り上げたことのある「レキシ」の話です。
最近、「レキシ」のセカンドアルバム『レキツ』を手に入れました。歴史的な事柄をモチーフに、上質なエンターテインメント作品を仕立て上げるというのが、この「レキシ」というバンドの魅力だと思いますが、この『レキツ』でも、その魅力は遺憾なく発揮されています。
前回ご紹介した『狩りから稲作へ』もこのアルバムに収録されているんですが、歌詞や細かいギミックがホントに入念に作り込まれていて、面白いんですよね。
『狩りから稲作へ』縄文土器・弥生土器どっちが好き?:国語塾・宮田塾のブログ
レキシ / きらきら武士 feat. Deyonna
Deyonna(出女)って誰だろうと思ったら、椎名林檎なんですね。参加メンバーが妙に豪華でござるな。歌詞も(タイトル通り)きらきらしくて面白いんですよ。「今日は朝から馬乗って あたしをここから連れ出して もう城には戻らないって 家臣には何も告げないで」もし私が武士に生まれていたら、朝から馬ばっかり乗って遊んでそうなんですが、そういう者にとってはとても共感を覚える(?)歌詞です。
「眼鏡が星 ブーツィ 武士」という歌詞は、ブーツィ・コリンズ(偉大なファンク・ベーシスト)への敬意!音楽マニアなら大受け間違いなしの表現でござろう。
「きらきら武士」が「きらきら星」のもじりであることは言うまでもないでしょうが、おそらく「吉良上野介(きらこうづけのすけ)」のイメージも踏んでいますよね。
あと、出演している可愛いモデルさんは誰なんだろうと調べてみると、仲川希良(きら)というモデルさんらしい。どこまで手が込んでいるんですか!脱帽です。
(追記:この記事を書いた後、車を運転しながらこの曲を何度か聴いて気づきました。曲中の「武士 in the sky」という歌詞、Beatles の「Lucy in the Sky with Diamonds」をもじっているんだ!「ルーシー・イン・ザ・スカイ」「ぶーしー・イン・ザ・スカイ」って(笑)。「Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band」収録の「Lucy in the Sky with Diamonds」、超有名曲なのに記事作成時には気づきませんでした。不覚。)
レキシ / ペリーダンシング
この曲でフィーチャーされているシャカッチとは、永積タカシ(ハナレグミ)のことらしいですね。またまた豪華なメンバー。
バリバリのディスコ調70年代ファンクなんですが、乗せられている歌詞は、強引に開国を要求するペリーと、対応に苦慮する江戸幕府のやりとりでござる(笑)。
開国を YO・KYU !
揺れる 江戸 BA・KU・FU !
Oh! 和親 JO・YA・KU!
特に「たった四杯で眠れぬ Tonight! 」には大笑い。もちろん当時の狂歌「泰平の眠りを覚ます上喜撰たつた四杯で夜も眠れず」をベースにしているわけですが、上手いなぁ。
あと少々、音楽好きな人のために。この曲の下敷きは、Isley Brothers (アイズリー・ブラザーズ) の 「Who’s That Lady」、それも1960年代のバージョンではなく、1973年の方のバージョンだと思います。
私も高校生の頃からアイズリーは大好きですが、その頃に持っていたベスト盤には1960年代のバージョンが収められていました。大学生ぐらいになってから初めて1970年代のファンク・バージョンを知ったんですが、これまた良い曲なんです。
1970年代と言えば、いわゆる黒人ポピュラー音楽の大勢が、甘い感じの(悪く言えば売れ線狙いの)モードに迷い込む時代だと私は思うんですが、彼らのこの曲は、ポピュラー具合と尖り具合が上手くバランスを取りながらミックスされています。特にギター・ソロは、ジミ・ヘンドリクスからの大きな影響を感じさせるんですが、それがとてもマイルドに表現されています。
レキシが彼らの演奏をパクっているということを言いたいわけではありません。アイズリー・ブラザーズへのリスペクト・憧れ・愛情をもっての演奏であり、素晴らしい曲に仕上がっていると思います。本当に良い仕事をしているなぁ、レキシ。また別のアルバムも聴いてみたいと思います。
The Isley Brothers – Who’s That Lady – Soul Train Line – Stereo HQ