山中伸弥教授のノーベル賞受賞に思うこと

昨日の報道は、山中先生のノーベル医学生理学賞受賞一色でしたね。ノーベル文学賞・平和賞にケチを付けるわけではありませんが、自然科学に関するノーベル賞の権威は極めて高いものですから、本当に価値のある受賞だと思います。

山中先生は、「(個人ではなく)まさにこれは日本という国が受賞した賞だと感じている。」と仰っていましたが、感謝の仕方に先生のご人徳を感じます。そしてその一方で、日本という国は今後さらに学術面に人材や資金というリソースを割くべきだ、どんなに大変でもそこは譲るべきでない、というメッセージも(半ば勝手に)読み取りたいと思うのです。

文科的な研究とは違い、理科系の研究は大規模なものが多く莫大な資金を必要とすることも珍しくありません。そして、そうした資金を目先の損得勘定で削減したところで、研究者自身の不都合を除けば、とりあえずのところ社会として大きな損害は生じません(むしろ政治家や官僚にとっては、その能力を評価してもらえるケースだ)。

しかし、長い目で見たとき、国力と学術力は密接な関係を持っているはず。学術力の弱い国って、結局は国際社会において発言力を持ちにくいと思うんですよね。

学問環境に魅力がある→多才な人材が世界から集まる→そうした選良がその国のメンバーとして活躍してくれる(その国のメンバーになってくれないとしても、少なくともその国の文化・人脈を祖国に持ち帰って広めてくれる)→国家として繁栄し国民もその利益を享受できる。

こうした良循環はアメリカ合衆国に典型的に見られますが(おそらく国としての根本的な政策だろうと思う)、経済的な地位が必ずしも高いとは思われないイギリスの国際的地位が高いのも、オックスブリッジという学術環境にその原因がある、というのは言い過ぎでしょうか。

あと、今回のiPS細胞研究などを見ても分かるように、画期的な研究って、日本国民どころか全世界の人間がその利益を享受できるものですよね。もし、一企業がこの技術を開発し独占してしまうというようなことがあれば、一企業の繁栄と引き替えに、人類全体には大きな損失をがもたらされたことでしょう。こうした研究はやはり、国家レベルで支援し国と同視できる機関が特許を押さえるべきではないか。実際、iPS細胞に関する特許の多くは、京都大学が取得管理していると聞いていますが、それは極めて正しいあり方だと考えます。

学術に資金をケチる国は、衰弱してゆく国です。以前も書きましたが、それは、教育にお金を掛けない家庭が右肩下がりに下がってゆくことと、非常によく似ていると思うのです。私の仕事柄、ポジショントークに聞こえるかもしれませんが、この仕事をしていなくとも、やはり教育費が家庭の中で最も重視されるべき費用だという考えは変わらなかったと思います。

というか、「教育費以上に必要な経費って何があるのさ?娯楽費は言うに及ばず、食費・住居費だっていくらでもケチれる。教育費が出せないなら出稼ぎでも深夜勤務でも何でもしてやるぜ!」というのが、子どもを抱える私と副代表の考えなんですけどね(笑)。


さて、山中先生に話を戻しましょう。

山中先生のご経歴を拝見すると、大阪教育大学附属天王寺中学・高校をご卒業(この学校は天王寺区にあります)。大学こそ神戸大学ですが、大学院・助手時代は大阪市大(当塾から近い場所にあります)。研修医時代は大阪国立病院(これまた当塾の近所です)。

ややミーハーながらも、大阪市民として、そして天王寺区民として、とても嬉しく思われる受賞であります。

それはそうと、昨日はフジテレビ(番組名は失念)から電話を受けました。出演依頼かなと思ったんですが(笑)、山中先生の小学校時代の話をご存じないかとの話。どうやら、下記ブログ記事が番組スタッフの目に止まったらしい。

山中伸弥教授の講演会:国語塾・宮田塾のブログ

直接存じ上げているわけではないので、何も話すことはなかったんですが、祝日の夜遅くに、番号非通知で堂々とかけてくるあたりがいかにもテレビ局だなと。山中先生の爪の垢でも煎じて飲んでもらいたい(笑)。